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カズムシティ (★★★★☆)

カズムシティ (ハヤカワ文庫SF)

カズムシティ (ハヤカワ文庫SF)


アレステア・レナルズといえば「ニュー・スペオペの担い手」で、あとは「あまりにブ厚い文庫本のヒト」という印象。
本書はシリーズの2作目なんだけど、1作目の「啓示空間」や3作目の「量子真空」も含め、すべて1000ページ超のボリュームで、不自然なほど厚いこれらの文庫本は、背表紙につける新しい糊の開発によって可能になったのだとか。
この厚さは原著の趣そのまま、という意味でグッジョブと言いたいところなんだけど、余りの厚さで無駄に注目を集めちゃって、「何かスゴイ本読んでますね」とか人に言われるたびに、「いやいや、変に難しい本でもなくて、ちょっとしたスペース・オペラです。娯楽味溢れる宇宙活劇です。あ、そうです、スターウォーズみたいな。えぇ。宇宙船が出てきて、、、」とか説明するのがメンドイ。
持ち運びも不便だし、分冊にして欲しい。


で、肝心の中身の話。
「啓示空間」や「量子真空」は絵に描いたようなスペオペなんだけど、本書はしぶいハードボイルド・タッチのハードSF。
復讐をもとめる追跡劇で、追いつつも誰かに狙われる、「逃げながら追う」展開。
書名でもある「カズムシティ」は、過去には栄華を極めながらも、機械が生体に浸潤する「融合疫」の原発巣として異形と化した街。
ドラッグを売りさばく組織や闇医者、享楽的に殺しに耽る貴族の蠢く、ダーティかつカオスな「カズムシティ」を舞台に、追いつ追われつ。
裏切りや不信に敵味方の区別が判然としなくなったり、ディックの如く記憶や自己同一性が曖昧模糊としていく中で、考える間もなく殺し合いが続くんだけど、ディックほど疲労感に埋もれず、最後までタフな追跡劇とSFらしいギミックで魅せてくれました。


シリーズで未翻訳のものがまだ2冊ほどあるようなので、次がまた楽しみです。