楽園の日々(★★★☆☆)

楽園の日々―アーサー・C・クラークの回想 (ハヤカワ文庫SF)

楽園の日々―アーサー・C・クラークの回想 (ハヤカワ文庫SF)


昨年アーサー・C・クラークが亡くなった際に、本屋で見かけた「自伝的な〜」の売り文句につられて買っておいた本だが、先日やっと読むことが出来た。

ただ読み終わってみると、期待していた「自伝的」な要素があまりない。

アスタウンディング誌の歴史にまつわる四方山話が、クラークらしい文章で綴られている。

皮肉、自慢話、諧謔。

例によって文章は面白いし、マニアじゃない自分でも楽しめる興味深いSF小咄もいくつか。


クラークの「アスタウンディング誌の黄金期」に関する記述をメモ。

>わたしにとってのアスタウンディング誌の黄金時代は1945年11月号で終わった

(なぜなら、原爆で)

>オッペンハイマーの有名な言葉にあるように、物理学者は罪を知った。

>そして、SF作家は少なくとも無邪気さを失ったのだ。


表紙の写真に書棚が移っており、日本語版の「宇宙のランデブー」が見える。

献本されたやつかな。


クラークがゲイかもしれないっていうのは、SFマガジンの追悼特集ではじめて知った。

そういえば、本書の邦題の元になった詩(本書中にも引用されている↓)の作者、テニソンもゲイらしく。

>若き日の楽園の日々を味わいながら、この渚を歩き回る

>科学のお伽噺と、時間の長い結果を心に抱きながら

詩は門外漢だが、この詩はどうもいいね。

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