旅行ガイドブックの市場動向(ロンプラ~地球の歩き方、まっぷるetc)

旅行ガイドブックの、電子書籍やデジタルコンテンツについて。

遂に?「地球の歩き方」が電子化を始めた。
【朗報】旅の荷物になって仕方がない『地球の歩き方』に電子書籍版が登場したぞ~ッ!! | ロケットニュース24

「地球の歩き方」云々でなくとも、今年は旅行ガイドブック的に「電子書籍元年」(死語)になるかなぁ、と思ってて。

近年、国内だけでなく、海外でも大きな動きがいろいろあったっすね。
いったん、各社の状況とか、そーゆーのを。
チェケらっちょして、メモ。

旅行ガイドブックは好きなんで、趣味的に。

まずは、2013年に大きな動きがあったロンプラから。

ロンリープラネットがBBCに買収され、数年後に売却された話(2013)

英語圏でNo1シェアのガイドブック、ロンリープラネット。
通称ロンプラ。

Lonely Planet Japan

Lonely Planet Japan

  • 作者:Rowthorn, Chris,Bender, Andrew,Crawford, Laura,Holden, Trent,McLachlan, Craig
  • 発売日: 2013/09/01
  • メディア: ペーパーバック

2007年、「Lonely Planet」は「BBC」に買収された。
買収額は、130百万ポンド。
BBC Worldwide sells Lonely Planet business at £80m loss – BBC News

その後、ロンプラ・ブランドのテレビ番組など製作し、ライセンス収入などを得る。
「Lonely Planet」のデジタル事業も成長した。

しかし2013年。
「BBC」は「Lonely Planet」を売却した。
買収額の、半値以下で。

BBCによる売却額は、50百万ポンド。
買収時の130百万ポンドから、80百万ポンドのロス。

なぜか。

2010年あたりまでは、上手くいっていたらしい。

By the end of March 2010, profits of 1.9 million had been generates, as digital revenues had risen 37% year-on-year over the preceding 12 months, spinoff products such as a Lonely Planet magazine had grown and non-print revenues increased from 9% in 2007 to 22%.

2010/3には、190万ポンドの利益を生んだ。
デジタル関係での売上は前年比37%になり、出版以外の売上構成がも2007年の9%から22%に向上した。

Lonely Planet – Wikipedia

しかし、続かなかった。

It has written down the value of Lonely Planet on its books several times since the acquisition, a spokesman said, making the loss on its current carrying value about 12 million.
The sale of Lonely Planet comes a year after a commercial review by BBC Worldwide which concluded that the business should focus on core BBC brands, rather than seemingly unrelated media assets such as Lonely Planet.

(世界的な景気後退と豪ドル変動のため)「Lonely Planet」の価値は1200万ポンド毀損した。
そして2013年。
まず、BBCは(「Lonely Planet」のような)周辺分野の資産でなく、コア・ブランドに集中しなければならない、と語り、、、
その翌年、「Lonely Planet」売却について発表した。

BBC Sells Lonely Planet – WSJ

「Lonely Planet」の売上も、芳しくなかった模様。

本拠地であるオーストラリアの例で言うと、、、
ロンリープラネットの売上は、
2011年には14%↓
2012年には21%↓
と、ダウンしていったとのこと。

さて。
「Lonely Planet」の売却先は?

「ロンリープラネット」は、25歳の億万長者Brad Kelley率いる「NC2 Media」に売却された。
アメリカのテキサスだかどこかに、広大なタバコ農園を所有しているらしい。

The man who did indeed contribute to the discovery of the Higgs boson?has just accepted an offer to be a Lonely Planet data scientist.
His role is to analyze the company’s vast stores of travel information, helping ?McCroskey’s team categorize customers.

ヒッグス粒子の発見に貢献したデータサイエンティストを雇って、、、

The 25-Year-Old at the Helm of Lonely Planet | Outside Online

それで、何をやっているのか?
ビッグデータから何かを取り出す?

よく分からない。

データサイエンティストの話は、いったん端に寄せておく。

BBCの売却の後、ロンプラの「現場」では何が起きているか?

「現場」では、大きなリストラが遂行された。
Lonely Planet staff face job losses in overhaul following BBC sale | World news | The Guardian

首切りの主たるターゲットは、「編集者」や「出版」関係者。

ロンプラは、「著者」の色が濃く出るガイドなんで、「編集者」の役割は結構デカいと思うが。。。
ちょっと方向転換するらしい。

authors are a critical part of the fabric of Lonely Planet, but we will take advantage of other content sources, such as community and social media, to build a content model that supports our entire business,

「著者」はロンリープラネットの重要な要素だが、、、
我々には、新しいコンテンツ・モデルを創成するのに必要な、コミュニティーやソーシャルがある。

なるほど。

そーいやロンプラのブログでは、authorがたまに出てきたりしてますね。
Meet a traveller: Kevin Raub, Lonely Planet author and South America expert – Lonely Planet's travel blog

「Frommer」がGoogleに買収され、8ヶ月後に売却された話(2013)

※「Frommer」は英語圏の有名なガイドブックらしい
Frommer's – Wikipedia

Frommer's? Japan Day by Day (Frommer's Day by Day - Full Size)

Frommer's? Japan Day by Day (Frommer's Day by Day – Full Size)

  • 作者:Alt, Matt,Yoda, Hiroko,Joe, Melinda
  • 発売日: 2012/03/27
  • メディア: ペーパーバック

Google famously purchased the Zagat and Frommer brands in 2012 and 2011.
Then, eight months after purchasing, Google sold the Frommer brand back to its founder, Arthur Frommer.
Why?
The search giant was after the information the brands collected???not the messy, money-losing business of printing books.

Yelp’s Nice, But Keep Your Travel Guides – Neal Ungerleider – Medium

GoogleはZagatとFrommer(有名なガイドブック)を2012年,2011年に買収した。

それから8ヶ月後、GoogleはFrommerを売却した。

なぜか?

データさえ手に入れば、「出版」なんてやる気がないからだ。

コチラも参考。

Google mines Frommer’s Travel for social data, then sells the name back | Ars Technica
「GoogleはFrommerを買収し、ソーシャルのデータだけとって、ブランドを売却した」

Google sold Frommer’s Travel — but kept all the social media data – Gigaom
「GoogleはFrommerを売却したが、ソーシャルのアカウントは保持している」

ふむ。

しかし、こーゆー書き方はフェアじゃないかもしれない。
Google側にも、言い分はあるだろうから。

その言い分は、ググっても見つからなかったけど。

「まっぷる」「ことりっぷ」の状況

まっぷる 沖縄 '15 (まっぷるマガジン)

まっぷる 沖縄 '15 (まっぷるマガジン)

  • 発売日: 2014/02/12
  • メディア: ムック

「まっぷる」、「ことりっぷ」の昭文社は上場してるので、売上の推移が分かるっすね。
http://www.mapple.co.jp/corporate/ir/presentation/images/ir_2014a.pdf

出版不況でもあるので、基本的には右肩下がり。

しかし、ガイドブック系は特殊要因もある。
ちょっと分かりやすく「ガイドブック」と「雑誌」のセグメントだけ抜き出してみる。
(下落傾向が強い地図本などは、ここではあんま関係ないので除外する)

ちなみに以前からあった電子書籍版などは別セグメントなので、純粋に市販出版物の売上数字となる。

f:id:tonogata:20140604165013p:plain

「ガイドブック」は「ことりっぷ」など。
「雑誌」は「まっぷる」かな。
※「まっぷる」は「雑誌枠」でないのもある

(百万円) 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
雑誌 3820 3883 3442 3431 3437 3554 3238
ガイドブック 2422 1573 1404 976 1125 1219 1432
合計 6242 5456 4846 4407 4562 4773 4670

基本は、出版不況で右肩下がり。
ただ東日本大震災などの旅行需要の減少で、ガクッと2011年にガクッと減少。

そこからの、回復傾向(微増)。

ただ、その回復傾向も、そろそろ足踏みかな?、と。

そーゆー感じでしょうか。

現時点で、このセグメント(旅行ガイドブック)。
5年前と比べて、15%ダウン。

今後も、旅行需要やヒット作などの要因で上下すると思うけど、、、
出版不況や、トリップアドバイザーなどネット系口コミの台頭。

ロンプラの例を見るまでもなく、長い目でみれば、ちょっとアレな感じ?

そんなトコロに入ってきたニュースがこちら(2014/3)。
http://www.mapple.co.jp/corporate/news/2014/03/4045.html

国内旅行ガイドブックの定番シリーズ『まっぷる』に、無料で電子版がついてくるサービスを開始いたします。
このサービスは『まっぷる』付属の無料サービスで、ガイドブックの地図や情報を持ち歩くことができるスマートフォンアプリ「マップルリンク」のバージョンアップで追加される新機能になります。

なんと、紙媒体の「まっぷる」を買うと、電子版「まっぷる」が無料!!!

マジか、という。

キャンペーンとかでなく、、、
全ての「まっぷる」(国内版)が対象、、、

ハンパない衝撃。。。

電子版の「まっぷる」。
今までは、アプリ版だったり、電子書籍としてkindle・koboなどで売られていた。

自分は主に、アプリ版を買ってた。
アプリ版の方がGPS連動とか、機能が多かったんだよね。昔は。

それが、なんと。
紙本を買えば、電子版が無料でついてくるとは。。。
なんという、神サービス。

これが

今年はガイドブックの電子書籍、遂にきたなー

と思った理由なんですが。

ちょっとそこら辺も色々あるんだけど、話が長いので、また今度。

[祝]「地球の歩き方」の電子書籍開始

さて。
「地球の歩き方」も、遂に電子書籍開始。
電子書籍 | 地球の歩き方

まずはフランス版のみ。
[asin:B00KG0GWHY:detail]

いやー、素晴らしいですね。

自分の場合はpdfとかにしてましたが、それも不要になる。
「地球の歩き方」のpdfをiPhone/Androidに入れると旅行が捗る – やじり鳥

今までも、単体アプリで出してみたり、ARアプリ出してみたり。
「ビューン」で数冊だしてみたり。
※今はやっていない

なかなか事業化が難しかったのか、どれも中途半端に終わってました。

今度は、やや本気を感じる内容。
楽しみです。

また、電子書籍になるということは、セール対象にもなるということ。
その点でも、ちょっと楽しみかな。。。
「まっぷるマガジン」「ことりっぷ」のiPhone/Androidアプリが45%割引セール – やじり鳥

「旅行人」の休刊(2011)、「人文社」の倒産(2013)

国内の、その他の話。

「旅行人」休刊は、大きなニュースでしたね。

自分は「旅行人」を「ごく稀に」買う程度でしたが、それでもショックを受けた記憶が。

「旅行人」を買ってなくても、バイブル的な存在になった旅行人ノート「メコンの国」や、旅行人ノート「チベット」なんかでお世話になった人も多いのではないかと。
自分がそうなんですが。

メコンの国―インドシナ半島の国々 (旅行人ノート)

メコンの国―インドシナ半島の国々 (旅行人ノート)

  • 作者:旅行人編集部
  • 発売日: 2007/05/01
  • メディア: 単行本

最終号というか、休刊号の「世界で唯一の、私の場所」も素晴らしい内容だったなぁ、と。

旅行人165号世界で唯一の、私の場所《休刊号》

旅行人165号世界で唯一の、私の場所《休刊号》

  • 作者:椎名 誠,高野 秀行,石井 光太,小林 紀晴,蔵前 仁一,宮田 珠己,グレゴリ 青山
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 雑誌

「旅行人」の休刊理由は、蔵前氏の健康上の理由とのことで、詳細はご本人の以下を参照。
旅行人本誌の休刊について – 旅行人編集長のーと

休刊になる理由はすでに本誌にも書きましたが、若いときほど無理がきかなくなって、仕事量を減らさないとやっていけないのが大きな理由です。

また、2013年には「人分社」倒産のニュースも。。。
まとめよう、あつまろう – Togetter

あと思い出した。
ちょっとマイナーな話になるが、「楽園トラベラー」も終了?してたんだっけ。。。
ビーチ好きなら必読の「楽園トラベラー」〜「世界のビーチ&リゾート」の系譜 – やじり鳥

まとめ

さて。

まー、出版不況です。

というよりも、口コミサイトの侵攻なのか?

そんな中、国内で大きく仕掛けたのが「まっぷる」。
これはヤバイ。
マジで神です。

そして、今度こそ本気なのか?
「地球の歩き方」。

今年は旅行者目線でも、いろいろ面白そう。

電子書籍やアプリの個別商品の話とかは、また今度。

そんな感じで。

地球の歩き方 カテゴリーの記事一覧 – やじり鳥
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まっぷる カテゴリーの記事一覧 – やじり鳥

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