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電車やバスの座席に使われる「モケット」の歴史のメモ

ファッション

先日、「バスの座席シートに青色のデザインが多い理由」という面白い記事があがっていた。


www.excite.co.jp


その中で、住江織物株式会社が「初めてバスにモケット生地を納めたのは大正13年(1924年)」という話。

そもそも、住江織物ではいつ頃からバスのシート(表皮材)を作られているんでしょうか?
「弊社は今年で創業から132年、合資会社創立から102年になるのですが、初めてバスを手掛けたのは1924年(大正13年)、東京市バスに無地のモケットを納めたのが始まりです。


へー、そんな昔からバスの座席はモケットだったんだ、と。


「モケット生地」というのは、電車やバスの座席によく使われる。
擦れに強く、耐久性が高いため、たくさんの人が入れ替わりに座る公共交通機関の座席で使われるらしい。
しかも、モワモワとして肌触りも良い。


住江織物のHPを見ると、バス・電車・飛行機への「シート表皮材からカーテン・壁装材・床材に至るまで内装材」納品事例がたくさんみられる。
鉄道・バス・船舶・航空機内装材|製品情報|住江織物株式会社


自分は昔、電車やバスで見るモケット生地の耐久性・肌触り・光沢感が好きで、
「家にモケット生地のソファーが欲しい!」
と、ずっと思っていた。


何年か前に、悩んだ挙げ句に購入したのは、「カリモク60」の「ロビーチェア3シーター モケットグリーン」。
12万円近くしたので、一大決心だった。
ロビーチェア3シーター|カリモク60


f:id:tonogata:20160306154759p:plain:w400

モケットグリーン
布地の中でも耐久性、耐摩耗性に優れており、電車やバスのシートなど、公共機関でも多く使われています。
起毛による光の反射によって生まれる独特の光沢は古くから布の世界では王様的な存在とされています。(アクリル55%・レーヨン45%)


まぁ、それはとにかく。
自分にしては高い買い物だったが、このソファーは今でも満足して使っている。
今後も長く使えればな、と。


それにしても、モケット。


いったい、モケットはいつからバスや電車の座席に使われているんだろうな?
ちょっと気になって、うつらうつらと検索してたので。
メモにて。


まず、先述の住江織物。
大正時代に広まった「バス」に初めてモケットを納入したのは大正13年。
ただ、それより以前の1913年(大正2年)に、日本で初めて機械織モケットを作り、国鉄や私鉄に採用されたらしい。
(手織りのモケットについては不明)

1913(大正2)年、ドイツ・イギリスから技術と力織機を導入し、日本で初めて機械織モケットの製造に着手し、国鉄1等車、私鉄のシート地に採用されました。

沿革(大正)|住江織物創立百周年記念サイト~住江物語り~


1913年(大正2年)。
ドイツ、イギリス。
なるほど。


日本の公共交通機関的には、大正時代には電車もバスも「座席にはモケットを使う」という認識があったのかな。
国鉄は「一等車のみモケット」から始まったみたいだけど。
そういえば、芥川龍之介「蜜柑」(大正8年)は二等車(娘は三等車)の話だが、この二等車がモケットかどうかは、ちょっと気になるところ。
芥川龍之介 蜜柑


電車的には明治に蒸気機関車があったらしいが、これもイギリスから車両を導入している(明治時代でのモケットの扱いは不明)


まぁ電車については、全般的にイギリス・ドイツの影響があっただろうなぁ。
座席の設計とか、素材とか、そーゆーの。


「モケット」というのは、フランス語で「カーペット」を表し、フランスで考案された。
その後の交通機関における流通という意味では、主にイギリスの、特に鉄道関係で有名らしい。
昔のイギリスには、モケットの工場が10社くらいはあったとのこと。

Moquette is famous for being used on London Transport's vehicles, particularly the seats of London Underground's Tube trains.
During the decades of the many railway companies, there were some ten moquette manufacturers in the UK.

Moquette - Wikipedia, the free encyclopedia


中でも、「Holdsworth」という会社が有名らしい。
1830年からモケットを作り、今でも世界中のバスや電車に提供している。

Many people will recognise moquette as the fabric used on train and bus seats, and Holdsworth, in Yorkshire, which has been weaving it since the 1830s, now supplies bus, train and coach companies worldwide.

Moquette fabric | Celia Rufey answers your fabric and upholstery questions | housetohome.co.uk


「Holdsworth」はCamiraに買収されたらしいので、「Camira」の公式HPをチェックしてみる。
200年前に創業した「John Holdsworth’s Mill & Co」がモケットを作っていたとある。

Founded in the heart of the UK’s textile region, John Holdsworth’s Mill & Co started weaving moquette fabrics for transport almost 200 years ago.
The company carved out a niche providing fabrics for bus, coach and rail interiors worldwide.

http://www.camirafabrics.com/sites/default/files/document-library/Railway%20Brochure.pdf


CamiraのHPにはHoldsworthの歴史があんま詳しくない書いてないなぁと思って探してたら、Holdsworth家の中の人が個人的に?まとめている資料サイトがあった。
Holdsworth - History - Holdsworth family and business - Cyclopaedia & History

The thick velvety fabrics known as moquettes have been supplied by Holdsworth's for transport upholstery probably since the first railway carriage was upholstered in the 1830s.
Holdsworthのモケットは、たぶん1830年代に初めて電車の座席シート生地に使われた。

Many of the railway companies which flourished in Britain during the nineteenth and early twentieth centuries had their carriages equipped with Holdsworth moquettes.
19世紀から20世紀初頭の鉄道会社は、たいていHoldsworthのモケットを座席シートに採用していたな。

London Underground chose Holdsworth's as one of the suppliers for its tube trains.
ロンドンの地下鉄も、Holdsworthをサプライヤーの1社として選んだ。

Bus and coach passengers all over the country found themselves seated on moquette manufactured by Holdsworth's in Halifax.
バスとか馬車の乗客が座っていた座席は、たいていHoldsworthのモケットだったはず。


そうか。
馬車も、座席にモケットを使ったのか。
日本でいうと、人力車?
(人力車の座席、現代ではモケットも使うらしいが、昔はどうだろうな)


ちなみに、このHPでは「Holdsworth」の工場の昔の写真や、家族・従業員の写真が色々まとめらていて、なかなか歴史を感じさせる。
Holdsworth - History - John Holdsworth & Co Ltd, Photo Collection


うーん。
ここまで。


日本でも、大正時代には電車(の一等車)やバスでモケットが使われた。
イギリスとかの影響?
そのイギリスは、大のモケット好き。
交通機関の座席といえば、モケット。
初めて電車にモケットが使われたのは、「少なくとも」1830年代。


うーん。


ちょっと話はズレるけど。
2010年に、ロンドンの地下鉄で座席モケットのデザイン募集があって、それで受賞して採用されたのが、工業デザイナーでロンドンの公共交通機関網のデザインを推し進めたキーマンである「Christian Barman」にちなんだものだったらしい。
New Standard Moquette Unveiled - London Reconnections


あ、やっぱ「色は青」(冒頭の記事参照)なんだ、と思って。
それだけなんだけど。


それからイギリスの面白い調査結果(by Camira)。
600人に「バスの座席は何がいいか」をきいたら、45%が「モケット」と答えたらしい。
理由は「 its comfort, appearance and its non-slip」。
Moquette fabric tops passenger preference survey — Bus Users UK


あと関連情報。
昔の電車のモケットの写真が、以下にたくさんあった。
なんというか、昔は優雅なデザインだったんだな、と。
Carriages: Technical Page - Moquettes


そんな感じ。


www.bousaid.com