伊良部島「佐良浜」の漁師達が駆け抜けた派手な歴史と独特すぎる世界観に迫るノンフィクション「漂流」

「漂流」(角幡唯介)

冒険家の角幡唯介氏が書いた「漂流」を読んだ。
これが、滅法おもしろかった。
「漂流」(角幡唯介)

1994年、37日間も海を漂流して奇跡的に生還した伊良部島・佐良浜出身の漁師、本村実氏。
しかし氏は、8年後に再び海で消息を絶った。

なぜ本村氏は、再び漁に出たのか。
その背景を知るために氏の足跡を追っていくと、同じ佐良浜で生まれ育った兄弟や関係者もまた多くが海で亡くなっている事実に行き当たる。
なぜ佐良浜の漁師達は、海にでるのか。

沖縄県の宮古島から伊良部大橋を渡った伊良部島にある、「佐良浜」という漁村。
独特な世界観を持つ「佐良浜」海洋民の成り立ちや、沖縄漁業史の裏表を丹念に整理していく。

この本のタイトルは「漂流」だが、いわゆる冒険譚のような部分はほとんどない。
沖縄の中でも独特な海洋民として活躍した「佐良浜民」に関するフィールドワークとして読むと、滅法面白い。

「海」という(ある種の)無法地帯を舞台に、乱れ散る現金、漂流に次ぐ漂流、弾けるダイナマイト、ひそひそと噂される神隠し、栄枯盛衰。
死と隣り合わせで生き、そして実際に多くが海に引きずり込まれることになる漁師達の足跡・カルチャーを、この本で初めて知ることができた。

漫画のようにドラマチックな、知られざる漁師達の物語
漁師と海の関係、その生き方、死に方。

現在、伊良部島の佐良浜にはカラフルなコンクリート製の住居が建ち並び、外国のキレイな街並みのような様相を呈しているらしい。

佐良浜の街並み

伊良部島佐良浜地区の街並み 。斜めの地形に並んだ、なにやらカラフルな家々 。
なんでも、船に使う塗料の余りを建物に塗っているので、こんなにカラフルなんだとか?!
スケールの大きな伊良部大橋をくぐって伊良部島に行くのもいいものですね 。

佐良浜の街並み(宮古島style)

単純に「マグロ漁・カツオ漁で儲かった漁師達の家」ということではなく、その街並みが形成された背景ついて、この本で触れることができる。

そういう意味では、宮古島・伊良部島に旅行する前に読んでおきたい一冊かもしれない。

非常な良書でした。

ほい。

そんな感じ。

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