ブーム終焉後の携帯小説、マネタイズの試みは

出版社のゴマブックスが民事再生を申請した。

携帯小説のベストセラー「赤い糸」を出した会社。「赤い糸」はシリーズ累計300万部。かなり売れた。

300万部というのは、相当な数字だよね。ハリポタ1冊分で300万部くらいなので、そう考えるとスゲー。シリーズ累計とはいえ。


携帯小説の出版ブームは、2008年初頭で分かりやすいくらいハッキリ終わってしまっている。

出版月報でも終了宣言が出てたし、2008年になってからはベストセラーが1本もない。代表銘柄のスターツ出版の8月の決算をみたが、上半期の書籍事業は前年6億から3億に半減していた。


ベストセラーが出なくても、ライトノベルのように固定客を掴んだ狭くて深いジャンルになっていけばいいように思うが、出版はやはり難しいかもしれない。出版不況だからというより、本来的に本を買うような読者層じゃなかった可能性が高い。

一方、携帯コンテンツ上での携帯小説は盛んな感じなので、「引き続きマネタイズを検討」ということになるかな。


そういう局面で、最近スターツ出版が「野いちご」(携帯小説投稿サイト)ではじめた取り組みは、かなり面白いと思う。

野いちご 本をつくるサービス

野いちご」には累計13万本の投稿小説があって、書籍化されるのは年間50本程度。

当然、今後はその書籍化のペースも下がると思われるんだが、そういう書籍化されない投稿小説を「自費出版」させよう、と。

自費出版というのは売ることでお金を取るサービスじゃなくて、「本を作る」手間賃を作者からとるビジネスモデル。スターツ出版はもともと「ルートエイジ」という自費出版ビジネスをやっているので、そっち系の経験・ノウハウがあっての企画なんじゃないかな。


今回の「野いちご」の取り組みだと、作者の書籍化申請から宣伝・販売までを「野いちご」内で完結させる。

「野いちご」の中で作者に書籍化申請(1冊1260円で自分用に買う)させ、よさそうなものであれば「野いちご文庫」としてサイト内で販売。

「野いちご」では作者を読者が応援するようなカルチャーがあるので、多少割高でも購入者が出てくる可能性がある。スターツ出版側のリスクはシステム利用料(書籍化申請)で回避できるので、スターツ・作者・読者の3者にとって「いい感じ」のモデルになる可能性はあるかも。まだ「野いちご文庫」は始まってないので詳細がどうなるかは分からないが、今後の展開がちょっと楽しみだな。少なくとも携帯小説のマネタイズという意味では、ナイス・トライだと思う。


雑誌といえば今月、iメニューに新たな雑誌コンテンツが参入した。

航空業界情報誌の携帯サイト「AIR STAGE CLUB」

「AIR STAGE CLUB」は航空会社の求人情報が中心の雑誌っぽい。発行部数は9万部。

スッチーになりたい人とかが読むような雑誌っぽかったが、ニッチなニーズということで、これはこれでアリなのかも。

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