「アイスコーヒーは日本が発祥?」の情報元と、アメリカやフランスの状況をチェック

ある記事で「アイスコーヒーは日本発祥?」とあるのを見て。

「?」とあるので、「諸説あるのかな?」と思い。
どんな感じか、ちょっと調べて見た。
その、メモ。

特に結論的なモノはないので、ご留意ください。

日本の「アイスコーヒー」の歴史

日本における「アイスコーヒー」出現は、以下に詳しい。

第23回「アイスコーヒーって誰が発明したの?」の巻

石井研堂の『明治事物起源』を見ると、明治24年、の氷店のメニューに「氷コーヒー」が記載されている。
また、明治36年の「食道楽 秋の巻」(村井弦斎著)にもコーヒーを井戸で冷やす製造法が記されている

なるほど。

明治24年「明治事物起源」

「明治事物起源」については、国会図書館の近代デジタルライブラリーにある。
国立国会図書館デジタルコレクション – 明治事物起原

画像のみ、検索不可なのがつらいところだが、↓にあった。

氷水屋の始 / 388p (0221.jp2)
※「氷コーヒー」の記載は223.jpeg

f:id:tonogata:20140611203050p:plain

神田小川町?にあった氷店のメニュー。

アイスコーヒー、2銭5厘。
他の商品に比べて、随分安いなぁ、と。
レモン水が2銭、上等ラムネが1本5銭。

んー。

ラムネは瓶なんだろうけど。
そうか、ラムネの半値か。

もっと高価なイメージだったが。

あと「氷コーヒー」をもってして、「アイスコーヒー」としてよいのか、ちょっと分からない。
たぶん、そうだと思うけど。。。

↓にあるように「氷に漬けて冷やす」タイプか、「氷をinする」タイプか?

明治36年「食道楽 秋の巻」

これは青空文庫にある。

村井弦斎 食道楽 秋の巻

それから暑い処をセッセと帰って参りますと
宅では冷した珈琲を拵えておいて出しますが
それを飲む時の心持は何ともいえないそうです。

冷した珈琲はやっぱりいつもの通り
小匙二杯の珈琲へホンの少しの
水と玉子の殻からを二つ振り細かく砕いて入れて
火の上で攪き廻しながら煎せんじます。

珈琲がよく出た時分湯呑一杯の湯を注して角砂糖を入れて
牛乳でもクリームでもコンデンスミルクでも加えて
それを硝子壜に入れて井戸の中へ釣つるしておいても
氷へ漬けておいてもようございます。

誰でも炎天を帰って来て何か飲みたいと思う時
それを出すと何より悦びます。

うーむ。

「暑い日に出されると、みんな喜ぶ」というのを読むと、飲みたくなるな笑

どれほど普及しているかは謎だが、ソースは確認できた。
コーヒーをビンに入れて、氷に漬けておく
これは、美味しいでしょう。

あと、卵の殻をコーヒーに入れるってのが「いつものように」とか言うのもカルチャーショック笑
コーヒー通の中では、常識なのかな?
知らなかったけど。
卵の殻を使うと苦みを抑えたコーヒーが作れる? | ライフハッカー[日本版]

文学作品に出てくる「アイスコーヒー」

大正・明治の作品では、検索にひっかからなかった。

漱石、芥川あたりで見つかるといいかな、と思ったんだが、釣果なし。

小酒井不木 自殺か他殺か

やがて、小田さんは私の差しだした冷やしコーヒーをすすって、事件の要頷を告げました。

初出 1927年(昭和2年)
著者 小酒井不木
題名 自殺か他殺か

日本SFのはしりの人らしい。

太宰治 正義と微笑

食卓の上には、たくさんの書類が雑然とちらかっている。飲みかけのアイスコーヒーのグラスもある。

初出 1942年(昭和17年)
著者 太宰治
題名 正義と微笑

おお、「アイスコーヒー」表記。

小酒井不木、昭和2年で「冷やしコーヒー」。
小中学生向けの雑誌「少年倶楽部」。

うーん。
呼び方が定まってなかったか?

その他、昭和の作品。
参考まで。

織田作之助 青春の逆説

サイレンが鳴ると、飛び出して喫茶店へはいり、冷たい珈琲をのんで、椅子の上でじっと眼をつむって横になっていよう。

織田作之助 道なき道

イチゴ水、レモン水、冷やし飴、冷やしコーヒ、氷西瓜、ビイドロのおはじき、花火

古川緑波 神戸

五百円のを取ると、オルドヴルから、ポタージュ。大きなビフテキ。冷コーヒーに、ケーキ。

などなど。

古川ロッパ「冷コーヒー」。

でた笑

これは、いわゆる「レイコー」だよね。。。

ただ、戦中・戦後くらいだと、呼び方が定まってない?
あんま普及してないのかなー、とも思ったり。

海外での「アイスコーヒー」の歴史

コーヒー専門店「珈琲花(かふぇこみ)」
http://www.j87.net/coffee/shop/

こちらが詳しかったです。
内容も興味深く、面白い。
http://www.j87.net/coffee_text/4_4.pdf

1920年代のアメリカでは、現在、日本人がアイス・コーヒーと呼んでいるものが普及していたと見られます。
これは、アメリカのコーヒー業界でコーヒー需要のおちこむ夏場に消費拡大をねらって、アイスコーヒーを奨励する広告キャンペーンを繰り広げていました。
例えば、「ヒルズ・プロス」の広告では、アイス・コーヒーをイラスト入りで宣伝しています。

1920年代、アメリカ、アイスコーヒー、キャンペーン。

なるほど。

コーヒー広告の歴史(本?)
28. SHORT HISTORY OF COFFEE ADVERTISING

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Before the international coffee campaign started in 1919, the National Coffee Roasters Association promoted two national coffee weeks, one in 1914 and another in 1915, wherein excellent groundwork was done for the big joint coffee trade propaganda that followed.
(中略)
Among other things, it put a nation-wide emphasis on iced coffee as a delectable summer drink and, for the first time, stressed the correct making of the beverage by drip and filtration methods instead of by boiling, which had long been one of the most crying evils of the business.

1914年の米コーヒー協会のキャンペーンで、初めて大々的に「水出しアイスコーヒー」がプッシュされた模様。
普及しているかは不明だが、アメリカでも1914年にはアイスコーヒーがあった、と。

しかも、こっちは「水出し」か。
※drip and filtration methods instead of by boiling

「ヒルズ・プロス」の広告については、探してみたがその年代のものは見つからなかった。

一応、「ヒルズ・プロス」の古い広告では↓を見つけた。
Prints Old & Rare – Coffee – Antique Maps & Prints
http://www.printsoldandrare.com/coffee/216coff.jpg

しかしこれ、年代不詳。
広告スローガンが

Some like (hot) and Some like it (cold).

とあり、「お熱いのがお好き(Some Like It Hot)」(1959年)からきてるのであれば、戦後だろうか?
全然分からん。

「珈琲花(かふぇこみ)」pdfの続き。

マザグランで画期的な冷たいコーヒーを体験した植民地部隊の隊員たちは、フランスに帰国後、この手法をさかんに紹介し、ついにバリのカフェのメニューに「カフェ・マザグラン」が登場します。

なるほど。

他のサイトの情報。
マザグランコーヒー

マザグラン Mazagran はアルジェリアの町の名前です。
この町では、水で薄めたコーヒー『カセーレジョール』を飲む習慣があったといいます。
このコーヒーがフランスに伝えられ、やがて世界中に拡ったのでしょう。

↓も参考。

35. WORLD’S COFFEE MANNERS AND CUSTOMS

The mazagran—sweetened cold coffee to which water or ice has been added—originated in Algeria.
(中略)
Upon their return to the French capital, they introduced the idea, with the added fillip of service in tall glasses, in their favorite cafés, where it became known as café mazagran.

アルジェリアが発祥、という話。
水出しというより、water or iceを加えた形かな?

長いグラスで提供されるのが特徴、という意味では、今のアイスコーヒーにイメージが近い。

Mazagran (drink) – Wikipedia

年代的には1840年あたりの模様。
※ちょっと分からないが

以下、関係ないが、面白かったので。

Mazagran was a name of a failed carbonated coffee soda beverage developed as a collaboration between Starbucks and Pepsi in the mid-1990s.

Mazagran – Wikipedia

1990年代に、スターバックスとペプシ(炭酸)がコラボ。
炭酸なコーヒーを開発して、Mazagranとして発売した。
A Starbucks history lesson: Bottled Starbucks Mazagran – StarbucksMelody.com

なるほど。

スタバとペプシのコラボって、よく考えるとスゴイな。。。

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https://www.youtube.com/watch?v=g1bL94KYNss

まとめ

一応、まとめとく。

ググった粒度がバラバラなので、意味はあんまない。
例えば、アメリカの状況も、広告以外の出版とか、もっと昔に記載があるかもしれないしね。

内容
アルジェリア 1840年? マザグラン
日本 1891年(明治24年) 明治事物起源「氷コーヒー」2銭5厘
日本 1903年(明治36年) 食道楽「宅では冷した珈琲を・・・」
アメリカ 1914年 「水出しアイスコーヒー」広告
日本 1927年(昭和2年) 小酒井不木「冷やしコーヒーをすすって・・・」
日本 1942年(昭和17年) 太宰治「アイスコーヒーのグラス・・・」

マザグランからフランス兵がパリに帰ってきたのはいつなのか。
面倒なので調べてない。

広義の「アイスコーヒー」の一番最初は、アルジェ/パリかな?

氷に漬けて冷やすタイプは、日本が早いかも?
※アルジェの事情を調べてないので、ノー根拠

「水出しアイスコーヒー」は、アメリカでも1914年にはあった。
※発明されたのはどこだろう?

そんな感じ。

続きの話。


日本初のアイスコーヒー「氷コーヒー」(2銭5厘)の価格は高いのか?安いのか? – やじり鳥

そのほか。

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