マイルの2021年問題と、ANA・JALにおける国際会計基準(IFRS)の適用

現在、航空会社のマイルについて、どのように会計処理をしているかは開示されていない。
ポイント発行企業によってはポイント引当金などを開示している場合があるが、ANA・JALにおいてはマイルに関する開示がない形らしい。

それはともかく、今後、会計基準が国際会計基準(IFRS)に移行すると、マイルに関する会計処理が厳しくなるのでは?という話が、以下の記事にあった。

航空会社の「マイレージサービス戦争」過熱 戦場は空からウェブへ
その基準では、売上を商品売上と販売にかかる費用(マイルやポイントが将来もたらす売上減)に分離し、会計上純粋な商品売上しか計上できません。
つまり10万円の航空券を販売し、それに1万円相当のマイルを付与した場合、決算期内にマイルが消費されなければ9万円の売上しか計上できなくなるのです。
そして利用者がマイルを使って無償航空券で搭乗するなどした時点で、やっと残り1万円の売上が計上されます。

2021年4月から、全業界でIFRSが強制適用となる。
それまでの期間も任意で適用できるし、すでに移行済みの企業もある。

ANA・JALについては、まだIFRSに移行していない。
ANAは任意適用を検討している旨のみ明らかにしている。
JALは2021年3月期からIFRSを任意適用することを発表済み。

↑記事によると、IFRSになると航空券の売上から付与マイル分を差し引いて計上する必要がある。
そしてマイルが「利用される」か「期限切れになる」タイミングで、その付与マイル分の売上を計上できる。
新会計基準で変わるポイントの扱い 戦略転換も必要に

IFRS以前は、航空券の価格を100%で売上にしつつ、経費で発行マイル分のポイント引当金(*1)、例えば売上の10%を準備。
IFRS以後は、航空券価格から付与マイル分を差し引いて、例えば価格の90%を売上計上、契約負債10%も計上。
マイルが使われたタイミングで、残りの10%を売上計上する。
(*1)JALの場合は「営業未払い金」

計上時期がズレると当期売上が減るので、航空会社からすると「さっさとマイルを使って欲しい」という状態になる。

この話で思い出したのは、アシアナ航空がマイルの売上計上を焦って、監査会社に指摘されたという話。
(アシアナ航空は2019年からIFRS適用)
アシアナ航空、10年越しの一撃「期限切れマイル計上」叶わず、売却へ

IFRS導入によるインパクトは、飛行機の機材リースに関わる会計処理の変化の方が、影響が大きいのかもしれない。

ただ個人的には、マイルに関する会計処理の変化で、マイル制度に改悪が発生しないかどうかが、気になるところ。

航空会社の「さっさとマイルを使って欲しい」という気持ち?を、もし制度に直接反映するならマイルの有効期限を短くするのが手っ取り早いかもしれない。
ただそこまで直接的なことは、いくら何でもやらないかな、という気がする。

もしくは、マイルの付与率を下げるのはどうかな?
近年でいうとANAのプレエコにNクラス(積算率70%)が登場した。

1回あたりのマイル消費量をアップさせるという手もある。
JAL国際線では、現金価格連動で必要マイル数が増える特典航空券PLUSが導入された。
ANA国際線では、プレエコの特典航空券が予約できるようになり、SFC特典の無料アップグレードは消滅の見込み。

売れ残り便をマイルの直前割引で売りさばくのも、いいかもしれない。
JAL「どこかにマイル」に続き、今年はANA「トクたびマイル」も始まった。

今後どのような形でIFRSの余波がでるか分からないが、変な改悪にならなきゃいいな、と思いました。

ほい。

そんな感じ。

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