小樽を歩く。「小樽運河」と北海製罐、「小樽海岸自然探勝路」とオタモイ遊園地

「小樽運河」と北海製罐

小樽旅行にて、ホテルから10分ほどの距離にある小樽運河を散歩した。
「小樽運河」というのは有名だが、実際に行くのは初めてである。

小樽運河では、「ふれあいの散歩道」として遊歩道(650m)が整備されている。
石畳の道に、63基のガス灯の柔らかい灯がともる遊歩道。

小樽運河 夜景

距離はさほど長くないが、夜にフラフラと散歩する分には気分が良かった。
フォトスポットになっている中央橋や、それより南には観光客も多い。
しかし遊歩道を北に進むと人が少なく、静かな道を歩けるのであった。

運河沿いには、飲食店が入っている「小樽タイムズガーテン」などあり。
レンガ造りの洋館で、レトロな雰囲気を醸し出していた。

小樽運河 小樽タイムズガーテン

ひときわレトロな印象を振りまいていたのは、ライトアップされた倉庫。
小樽市指定歴史的建造物に指定されている、「北海製罐 小樽工場 第3倉庫」(地図)。
大正10年~昭和10年に建設された建物群で、今では市に寄贈されて工場としては稼働しておらず、観光資源としてライトアップされている。

小樽運河 北海製罐 第3倉庫

この「北海製罐 第3倉庫」、運河越しに眺めると、ずいぶんと味があります。
キレイに煤けた壁面の印象や、階段・テラスの風変わりな構造。

北海製罐 第3倉庫 正面

壁面に取り付けられた階段のようなものは、スパイラル・シュート
荷物を船にサクッと積み込むべく、このシューターを滑らせて?運んだようです。

第3倉庫は、建築当初から荷物を揚げ降ろしするためのエレベーターや製品を運河へ搬出するためのスパイラルシュートがあり、機能的な設計がされています。

北海製罐 小樽工場 第3倉庫

北海製罐 第3倉庫 スバイラルシュート

秘密基地っぽというか、やたら少年心をくすぐる遺構。
昔の仮面ライダーのロケ地にも使われたらしい。映り込んだレベルではあるらしいが。
※1971年 仮面ライダー 第19話「怪人カニバブラー 北海道に現る」

よくSNSにこの北海製罐の工場を「ショッカーのアジト」として写真をアップされてるのを散見しますがあくまでも映り込んでいるだけです。

仮面ライダーロケ地大画報 北海道 小樽港

スパイラル・シュート2

また、この「北海製罐 第3倉庫」は、プロレタリア文学で有名な小林多喜二の作品にも登場している。
その作品というのが「工場細胞」(小林多喜二)で、舞台となった「H・S製罐会社」とは北海製罐のこと。
※代表作「蟹工船」のカニ缶も北海製罐で作られたものらしい

「工場細胞」は、青空文庫でも無料で読める。
「工場細胞」(小林多喜二)

タイトルの「工場細胞」というのは、社会主義・共産主義の運動に参加している主人公が、労働の現場たる「工場」に細胞(構成員)として入りこみ、働く人々をオルグ(勧誘)するところからきている。

読んでみたが、ちょっと面白かったので北海製罐に関わる一部を引用。

「H・S製罐会社」は運河に臨んでいた。
(中略)
「H・S工場」はその一角に超弩級艦のような灰色の図体を据えていた。それは全く軍艦を思わせた。罐は製品倉庫から運河の岸壁で、そのまゝ荷役が出来るようになっていた

缶を倉庫からそのまま搬出できるということで、これはまさしく第3倉庫のことか。
運河沿いにたつ第3倉庫は、確かに軍艦のようにも見える。

作品中では、「小樽」のことを「Y」としている。
北海製罐は「小樽におけるフォード」。

市まちの人は「H・S工場」を「H・S王国」とか、「Yのフォード」と呼んでいる。
(中略)
Y市は港町の関係上、海陸連絡の運輸労働者――浜人足、仲仕が圧倒的に多かった。
(中略)
「H・S工場」に勤めていると云えば、それはそれだけで、近所への一つの「誇り」にさえなっていたのだ。

当時の小樽では、港に関連して働く人が多かった。
その中でも、大手の北海製缶の工場で勤めているというのは、割と「いい感じ」だったらしい。

そこでは、人間の動作を決定するものは人間自身ではない。コンヴェイヤー化されている製罐部では、彼等は一分間に何十回手先きを動かすか、機械の廻わりを一日に何回、どういう速度でどの範囲を歩くかということは、勝手ではない。機械の回転とコンヴェイヤーの速度が、それを無慈悲に決定する。
(中略)
 このまゝ行くと、労働者が機械に似てゆくだけではなしに、機械そのものになって行く、森本にはそうとしか考えられない。「人造人間」はこんな考えから出たのだろう。職工たちは「人造人間」の話をすると、イヤがった。――誰が機械になりたいものか。労働者はみんな人間になりたがっているのだ。

ここで「人造人間」の話がでてきて、改造人間・仮面ライダーに続く・・・

それはさておき。

話としては、主人公が工場の中で「運動」を繰り広げたり、裏切りで投獄されたり、相対する資本家たる会社側はベルトコンベア導入で工員をガンガンきったり、買収危機で政治的な動きがでてきたり、、、

主旨はともかく、1920年代の小樽の労働者の会話や様子が細かく描かれていて、面白かった。

なお「工場細胞」では、仲間の裏切り(チクリ)で投獄された主人公。
続編「オルグ」では、今度は自分が仲間を裏切ってさっさと出所。
意中の女工「お君」には未練タラタラだが、主人公の裏切りのせいで工場をクビになった「お君」はプンプンで・・・という話らしく。
書評 小林多喜二「オルグ(「工場細胞」第二部)」

ナニそれ面白そう、と。

でも青空文庫に入っていないので読んでない。

なお「工場細胞」の中ではあまり良い描かれ方をしてない北海製罐だが、2021年には第3倉庫を市に無償譲渡しつつ、保全支援のため1000万円の寄付もつけており、懐が深いというか、いい話だなと思いました。
小樽工場第3倉庫、市に無償譲渡

「小樽海岸自然探勝路」とオタモイ遊園地

「おたる水族館」(バス停「おたる水族館」)からオタモイ(バス停「オタモイ団地」)まで歩く「小樽海岸自然探勝路」にいってきた。
「オタモイ」というのはアイヌ語で、小樽にある唯一のカタカナ地名らしい。
小樽海岸自然探勝路

この自然探勝路、寄り道したり休憩したりで、全体としては4時間くらい使った。
歩くだけなら、2.5時間くらいで行けるんじゃないかと思います。

小樽駅から、まずはバスで「おたる水族館」へ。

おたる水族館

水族館から10分ほど歩くと、「小樽祝津パノラマ展望台」地図)。
展望台ですね。

小樽祝津パノラマ展望台

そのまま進んで「ホテルノイシュロス小樽」地図)の前を通り、小樽海岸自然探勝路(地図)の入口から山に入っていきます。

ちょっと探勝路の入口が分かりにくいが、入口はホテルを過ぎてスグのところにある。

赤岩オタモイ線歩道

あまり下調べせずにきたんだが、普通に「ライトな山登り」的な様相を呈してました。
平地を軽く歩くレベルのつもりだった(笑)

小樽海岸自然探勝路 山道

スニーカーであるけるようなレベルではあるが、登りが続く。

ちょっと時間が経ってから見下ろすと、遠くに先ほど通過した展望台がみえました。
うわー、結構登ったなぁ、という。

小樽海岸自然探勝路 景色

途中、何か見晴台のようなところがあった。
「下赤岩山 展望台」(地図)かな?

小樽海岸自然探勝路 見晴台

このあたりはロッククライミングのスポットとして利用されているらしく、人がたくさんいた。

正直、見てるだけで膝が震える。
当方は、無理です(笑)

小樽海岸自然探勝路 ロッククライミング

やっと下り道になり、景色を眺める余裕もでてきた。
海沿いの山道、歩くのは気持ちいいですね。

小樽海岸自然探勝路 海沿いの山道

以前はオタモイ海岸に降りることもできたらしいんだが、現在は落石による通行止め。
現在、オタモイ海岸にでることはできない。

さて。

さらに下って、ゴールの「オタモイ唐門」地図)。
ここにはベンチもあり、静けさに包まれた中で休憩ができて、非常に良かった。
めっちゃマッタリできます!!

オタモイ唐門

この唐門は、もともと海寄りにあったものを、移設したそうです。
というのも、海外には昔「道内屈指の観光地」たる龍宮閣などがあったものの、火事で焼失。
この唐門だけ、内陸側に持ってきたという感じ。

オタモイ唐門 看板

龍宮閣があった付近には、過去に「オタモイ遊園地」地図)というのもあったらしく。
そこに降りていく道があったので、ついで寄ってみた。

オタモイ園地 入口

「オタモイ遊園地跡」。
全くの平地で、なにもナシ・・・。

オタモイ園地跡

消失した龍宮閣があった場所を、視覚的に確認できるフォトフレームがあった。
SNS映えスポット「Otaru Photo Frame」が誕生しました

オタモイ遊園地 フォトフレーム

↓こんな感じで、崖に高級料亭「龍宮閣」があり、オタモイ遊園地とともに栄えた観光地だった。
1952年に火事で焼失。

龍宮閣の看板

↓は開園当初(昭和10年)の映像。

そんな「オタモイ遊園地」だが、再開発の話が進んでいるそうです。
小樽の「オタモイ遊園地」跡地 再開発へ 基本構想案まとめる

オシャレな施設や遊歩道ができるらしい。
そうなってくると、小樽海岸自然探勝路の方も人が増えてくるかもな~と思いました。

ほい。

小樽海岸自然探勝路については、なかなかいい距離感のトレッキングコースでした。

基本的に観光客はいなくて、地元民(道民)がメインかな?という感じ。
こっちも地元民と思われたのか、すれ違う人によく話しかけられた。
「頂上まで、あとどれくらいですか?」って何度かきかれたり、すれ違いの挨拶も親しげというか。
小樽人の「人の良さ」というか、「距離の近さ」みたいなのを感じました。
当方はちょいちょい地方でトレッキングに行くけど、この感じはちょっと珍しいな、っていう。

そういう意味で、良いトレッキングコースだったな、と思います。

ほい。

そんな感じ。

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