マイルを刷る銀行と化した航空会社
WEBニュースで、面白い記事があった。
銀行化する航空会社─マイルはこうして「大金を使う人」のものになった
この記事の原文は、以下でも読める。
Airlines Are Just Banks Now
デルタ航空の金額ベース移行の話をきっかけに、規制緩和の要否について語られている。
論旨はデルタ云々というより、「規制緩和が悪い。ついでにマイルも悪い」というもの。
曰く、航空業の規制緩和を続けた結果、航空会社はマイルを刷る銀行のような存在になった。
マイルはごく一部の利用者に益するだけで、大多数にとってはチケット代の高値の要因になっている。
サマリーは、以下。
- デルタの急激な制度変更で、大勢がうんざりしている
- 問題は、自由競争のために航空業の規制緩和を続けた政府議会にある
- 規制緩和の結果、航空会社はクレカなど金融にも乗り出しマイル制度を拡張、利益を追い求めた
- 彼らは「マイルの販売」さえしており、今ではフライトよりマイルで稼いでいる(UAの例)
- 航空会社は無から紙幣を刷るようにマイルを生み出し、まるで奇妙な銀行のような存在になった
- マイルは航空会社が後から自由にその価値を引き下げることもできるし、価値が不透明
- またマイルの原資は航空券代に含まれるので、非マイラーが一部の裕福な利用者を補助しているようなもの
- もともと、航空業界は空港の発着数などの制限により、自由競争の余地が少ない
- 昔に比べると航空券の価格は下がったが、それは規制緩和以前からのトレンドのレベルでしかなく、規制緩和による価格下落の効果はなかった
- 規制緩和しても航空会社が増えてないので、今回のデルタ航空のように航空会社が酷いサービス劣化を強行しても、実質3社しかない他社も追随するだけで、利用者は泣き寝入りするしかない
- 航空業界の規制を強化して、金融業のようなマイル展開のアレコレもやめさせるべき
なお、この記事の筆者であるガネーシュ・シタラマン氏は、今度上記のような話の本を出すとのこと。
本のタイトルは「Why Flying Is Miserable : And How to Fix It」。

なお、この記事に対してVFTWがアンサーソングを書いていたので、ここに。
A Big Movement Is Coming To Re-Regulate The Airlines, And Make Air Travel Worse
- 航空会社のクレカ導入とマイル制度により、飛行機は民主化し利用者の裾野を広げた
- 飛行機に乗れなかった層がクレカとマイルで飛行機に乗れるパターンもあるワケで、必ずしも裕福な一部の利用者だけにとってだけ有利な制度というワケではない
- 航空会社にとっても、売れ残ると予想した分を特典航空券としてさばきつつ、次の有償利用の獲得に繋げることができる
- マイルは「無から刷る」ようなものではなく、発行時点でその価値の内訳を会計的に分類するよう義務づけられており、好き勝手できるものではない
- マイルの販売では必ずしも購入者が損をしているわけではなく、大抵の場合は価値を知った上で「足りない分だけ」買ったりするのだし、そもそも一律にマイルの価値を決められるモノでもない
- そもそも規制の目的は「価格」でなく「安全性の確保」であった。いずれにせよ、それはサウスウエストの例をみても誤りだったし、規制緩和以降の方が安全性があがっている(規制は意味なし)
- 米国では空港を政府が所有して細かな規制ルールを設けつつ、自ら増設などの空港運用に失敗して発着数が伸びないなど、競争原理が働かず航空運賃が上がる原因は「政府と規制」にある
- 世界の例をみても、規制強化して政府が運営する航空会社はたいてい腐敗しており、良いことは何もない
いずれにせよ、着目点が「マイルを刷る航空会社」という点だったのが、ちょっと面白かったので。
非航空分野を収益化するというのは、最近の日系(ANA/JAL)も同じですね。
最近ではフライトと関係なく、クレカの決済額がステータスやマイルに関わってくる。
ex) ANA「ライフソリューションサービス」、JAL・・・11月に発表の新制度
また「マイル経済圏」を確立する動きも加速しており、例えばANAは「マイルで生活できる世界」を目指している。
コロナ禍で傷んだことによる多角化という面もあるが、コロナ禍以前から始まっていた潮流であった。
これは今後も継続的に進行するんだろうな、と。
ほい。
そんな感じ。