ニセコのフットパス「文学・歴史の散歩道」を歩いた。文学と森の散歩道、そして俺たちの神。

ニセコフットパス「文学・歴史の散歩道」

スキーリゾートで有名な北海道のニセコ。
自分はウィンタースポーツをやらないので、ニセコには縁がなかった。

しかし、秋のニセコは比較的ホテル代も落ち着いていることを知り、今回行ってきた。
目的は、秋の山や平地のフットパス。

ニセコにはフットパスコースが3つ設定されており、今回行ったのは「文学・歴史の散歩道」。
フットパスコース 文学・歴史の散歩道

ニセコ駅を基点にして10kmほど歩く。
駅を離れると速攻で自然豊かな環境になるので、お手軽に自然を味わえた。

ヌプリのハンバーグカレーを逃す

バスでニセコ駅に到着。
駅はハロウィンの飾り付けが施され、何やら賑やかな雰囲気だった。
観光客も、多い。

ニセコ駅 外観

ニセコ駅の中には、茶房ヌプリというカフェが入っている。
ここで名物のハンバーグカレーを食う予定であった。
食べログ ヌプリ

しかし店をのぞいてみると満席、駅内に行列もできている。

いかんせん、今回は事情があってスタート時刻が遅め。
待つことも叶わずで、とりあえずフットパスコースを歩き始める。

農場に続く「親子」の坂を登る

駅から少し歩くとすぐに、農地と山の素晴らしい散歩道となった。
車道を歩いているだけなのに、広い空に北海道感があって、なかなか良い。

有島武朗「親子」の坂に至る道

フットパスコースには観光名所が組み込まれている。
最初の名所は、有島武朗の小説「親子」に登場した坂。

有島武朗「親子」に登場した坂

農場の事務所に達するには、およそ一丁ほどの嶮しい赤土の坂を登らなければならない。
ちょうど七十二になる彼の父はそこにかかるとさすがに息切れがしたとみえて、六合目ほどで足をとどめて後をふり返った。

有島武郎 親子

このフットパスコースの名称にある「文学」とは、有島武郎のことを指している模様。
この坂の他にも、「有島記念館」がコース上に含まれていた。

今回のフットパスに合わせて有島武郎の本を読んでおこうと思っていたが、間に合わなかった。
昔読んだ本もあると思うが、全く記憶がないんだな。

赤土の坂

苔むす赤土の坂は柔らかく、日陰にひんやりと涼しい。
しかし坂を登りはじめると、やはり息が切れた。

坂を登ること3分。
たった3分だが、やはり坂道はキツい。

登りきると、パッと正面が開けて羊蹄山が見えた。

親子の坂を登り切ったあとの眺望

坂を登り切ったご褒美で、よい眺めだった。
大正時代に書かれた有島武郎「親子」にも、坂の後の羊蹄山(マッカリヌプリ)を描かれている。

それからは坂道はいくらもなくって、すぐに広々とした台地に出た。
そこからずっとマッカリヌプリという山の麓にかけて農場は拡がっているのだ。
なだらかに高低のある畑地の向こうにマッカリヌプリの規則正しい山の姿が寒々と一つえて、その頂きに近い西の面だけが、かすかに日の光を照りかえして赤ずんでいた。

有島武郎 親子

坂であがった息を静めながら羊蹄山を眺めると・・・

大正時代から、景色は変わっていないんじゃないかと思えてくる。

まぁ、実際には色々変わってるんだろうけど。

宮山の道で通行止めを迂回する

坂の後、少し歩くと有島記念館に至る。
有島記念館

本来なら寄っていきたいところではあるが、今回は時間がない。
そのままコースを歩き続ける。

有島記念館

記念館の脇に遊歩道が整備されており、森に続いていた。
春であれば、桜もキレイな遊歩道だそうだ。

有島記念館の裏の遊歩道

小川にそって、木々の道を行く。
この道は、歩いていて気持ちが良かった。

不思議なことに、誰ともすれ違わなかった。
こんなに気持ちいい道なのに、なんでだろう?と思っていたら・・・

理由が分かった。

途中で、ボードウォーク破損により行き止まりとなっていたのであった。

宮山 ボードウォーク

コロナ禍の間にでも、痛んでしまったのであろうか。
「経年劣化により木道の一部が陥没しており、通行止めとする」とあった。

来た道を戻るのも残念なので、そのまま脇道にそれて車道に出る。
迂回して、コースに復帰する形。

迂回路 ニセコフットパス

そして徐々に、日が暮れてきた。

コースはまだ半分以上、残っている。
急がねば。

夕暮れ時の森で人生の儚さを知る

途中、「農場解放記念碑」があった。

有島武郎 農場解放記念碑

明治時代、有島武郎の父はこのあたりに鉄道が開通されることを先んじて知っており、農場を拓いた。
しかし、その父が亡くなった後、有島武郎は農場を無償で小作人に解放してしまう。
有島農場の誕生と終焉

スゴいことするな、と思いました。
自分の土地をタダで人にくれてやるなんて。感動した。

しかし有島武郎は、農場を解放した翌年に亡くなった。
人妻との不倫がばれて、相手の旦那とトラブルになった上での、自殺だった。

悲しいね。

有島武郎は一度キリスト教に入信していたが、6年後には離脱していた。
離脱理由としては、軍隊生活で「キリスト教国民の裏面をみせられた」とも語られている。
神なき後は、文学や社会主義に触れていく。

そんな逸話をスマホのwikiで眺めながら歩き・・・

道は、再び森に入っていく。

木漏れ日の美しい、散歩道へと。

ニセコ 文学・歴史の散歩道

人生には、いろいろある。

しかし夕暮れ時の森はいつだって、こんなにも美しい。

ニセコ 文学・歴史の散歩道 夕暮れ

とか、言ってる場合じゃない。

日が暮れてしまう。
マジで焦ってきた。

俺たちの神

森を抜けて、道の駅ニセコビュープラザに到着。
人里に、帰ってきた。

道の駅ニセコビュープラザ

昼飯を逃したので、腹ペコである。
腹ペコで、歩く元気がでないでござる。

しかし店をのぞくと、品切ればかり・・・。

当方:「ニセコ野菜のチキンカレー」をください
店員:ごめんなさい、売り切れなんです~
当方:あ、じゃあ「ニセコ米おにぎり」で
店員:ごめんなさい、白米がもう・・・

他の店を探すも、まだ食えそうな店には人が列をなしていた。

もはや、ここまで。

暗くなる前にニセコ駅に戻りたい。
フットパスコースも、ここで離脱する。
主要道を歩いて、先を急ごう。

洞爺線の道

しかし、腹が減った。

ニセコ駅周辺の店は、営業時間が短いから全部閉まってるだろう。
そもそも駅前にお店は少ない。

電車と、その後の最終バスの時間を考えると、道をそれて街の店に寄る時間もない。
サッと食えるファーストフード店も、周辺にはナシ。

どうしたものか。

サクッと食えて、ガッツリ補給できるやつを、誰か・・・

その祈りは、確かに届いた。

俺たちの、神に。

セイコーマート ニセコ店

セイコーマートだッ!!

ありがとう、セコマ。
北海道で困った時は、たいていセイコーマートに救われる。

セイコーマート ホットシェフ

ホットシェフだッ!!

店内手作りのホットシェフ。
レンチンしなくても、あったかい飯がスグに食える。

セイコーマート カツカレー

カツカレーだッ!!

体力が消耗した時は、やっぱりカツカレー。
イートイン・コーナーはなかったが、外で地面に座り込んで食べちゃう。

食ってみると、実にうまい。

ようやく腹を満たせて、気力も回復。

ニセコ駅に向かって、歩き始めたのであった。

ニセコ 夕暮れの道

ようやく駅に辿り着いた頃には、薄暗くなっていた。

ニセコ駅 夕方

そしてなんとか、電車で倶知安まで行くことができたのであった。

ニセコ駅 夜

トータル、よいフットパスコースだった。
後半は時間切れで、コースを歩けなかったけど。。

ほい。

そんな感じ。

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tonogata
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