金沢カレーを巡る百咖喱夜行の旅

金沢カレーの系譜を辿る

金沢カレーの老舗「チャンピオンカレー」の公式サイトに、「金沢カレーの歴史」というコーナーがある。
1956年「レストラン ニューカナザワ」に勤務していたシェフ達が、それぞれ金沢カレーの元祖となって店舗を開きつつ、協力・分派しながら現在の金沢カレー各店に至る経緯がまとまっている。
チャンピオンカレー「金沢カレーの歴史」

チャンピオンカレー創業者の田中氏が最初に金沢カレーのレシピを作り、そのレシピが共有されていったという「チャンカレ史観」による系譜図もあり、これが興味深い。

チャンピオンカレー創業者が最初に作ったレシピは「旧レシピ」。
現在のチャンピオンカレーのレシピは「新レシピ」。
その流れに関係ないものを「その他のレシピ」として整理している。
※起源が同じレシピでも各店でアレンジ、進化しているので味は異なるとのこと

自分がよく食うのは東京のゴーゴーカレーだが、他の金沢カレーもたまに食う。
金沢カレーは好きなので、今回の金沢旅行では1つ、色んな金沢カレーを食ってみようかな、と。

2泊3日の旅で、金沢カレーを食いまくる。
なんだったら、系譜図にあるカレーを全部食う。

そんなことが、はたして可能だろうか?
たった2泊3日の旅で、全部のカレーを?

必要なのは・・・

「多少なら体重が増えても構わない」という鋼の意志

限られた時間の中、店に行列があらば「並ぶ or 他店に行く」を瞬時に計算する「冷静な頭脳」

やっぱり太るのは嫌なので、空いた時間は兼六園をウォーキングしまくってカロリー消費する「永遠の持久力」

それらを全て兼ね備えた当方なら・・・

できる。

金沢カレーを、食って食って、食いまくる。
金沢百万石で、「百鬼夜行」ならぬ「百咖喱夜行」である。

それでは早速、レッツらゴー!!

キッチンユキ(金沢エムザ)

系付図では「洋食タナカ」派生の「旧レシピ」で整理されていたキッチンユキ。
本店は別にあるが、近江町市場の入口対面にある商業ビル「金沢エムザ」にも店舗がある。
今回訪問したのはエムザ内の「金沢カレー キッチンユキ」。
金沢カレー キッチンユキ

金沢カレー キッチンユキ 外観

店前に、スマホ決済やクレカに対応する券売機がある。
店内にはカウンター席、テーブル席あり。

こちらのお店では金沢カレーのことを「金沢ブラックカレー」と呼んでいる。
今回は、「トンカツカレー」(990円)をオーダー。

金沢カレー キッチンユキ メニュー

後から気がついたが、こちらは「玉子野菜スパゲティー」を発案したお店だそうで、カレーにも「玉子野菜」がある。
一方、系譜図にある「インデアン」は「野菜玉子カレー」が名物で、それが「ヤサタマ」として北陸に広がったらしい。

オーサーしてから割とすぐに、「トンカツカレー」が着丼した。
はやっ。

金沢カレー キッチンユキ トンカツカレー

この金沢カレー、個人的には大当たりだった。

特徴的なのは、適度な濃厚さで素材の味わい深さを感じるカレー。
いわゆる金沢カレーというとドロッと粘度が高いイメージだが、こちらは濃厚ながら粘度は薄め。
ルーに溶け込んだ素材を感じるというか、口当たりもソースが効いてるのかフルーティーな爽やかさ。
スルスル食えてクセになる。

いわゆる金沢カレーが、濃厚さの深淵をのぞきこんで黒く染まり、普通のカレーとは違う異形のカレーになった感があるのに比べると、このカレーは「こちら側の黒いカレー」感がある。
何を言ってるか良く分からないが、つまりそういうことです。

あと、薄くて柔らかいトンカツが、カレーによく合って秀逸。
めっちゃ薄いのに柔らかくて、衣が細かくシットリした感じ。

金沢カレー キッチンユキ トンカツ

この薄いトンカツやルーのバランスが良く、一皿としての完成度が高いと思った。
普段自分が東京で食ってるゴーゴーカレーとかとはまた違った感じで、非常に美味しかった。

インデアンカレー(東山店)

インデアンカレーもまた源流系、チャンカレ系譜図でいうと旧レシピ。
観光地「ひがし茶屋街」の入口に、フランチャイズ店の東山店があり、そちらを訪問。
インデアンカレー

こちらは東京の中目黒にも店舗があるようで。初めて知った。
ちなみに大阪「インデアンカレー」や帯広「インデアンカレー」とは関係ナシ。
大阪旅行、毎日、食べる、インデアンカレー

金沢インデアンカレー 東山店 外観

店舗は狭く、カウンター席のみで4人くらいかな?

メニューをみると、「野菜玉子カレー」が名物とあったので、そちらを注文した。
「野菜玉子カレー」(850円)。

金沢インデアンカレー 東山店 メニュー

こちらのお店は、いわゆる金沢カレーっぽさを作った最初のお店らしい。

  • ステンレス皿
  • スプーンとフォークを1つにして洗い場が楽になる「先割れスプーン」
  • サラダの別皿をやめてキャベツをカレーに添える

基本、洗い物を少なくするのが理由だったんですな。

店内には、2011年に直営店が復活した際の記事が貼ってあった。
フランチャイズ展開も盛んだったので、名物「野菜玉子カレー」(ヤサタマ)が富山方面にもひろがったんだとか。

金沢インデアンカレー 東山店 新聞記事

ということで、「野菜玉子カレー」が着丼。

薄い玉子焼きに野菜が入っており、マヨネーズとケチャップがかかっている。

金沢インデアンカレー 東山店 野菜玉子カレー

食ってみて気付いたが、他店との比較のためにトンカツにすべきだったかもしれない。
マヨネーズが結構効いてくる。

辛さは後から少しくるけど、マヨネーズと玉子でかなり中和される。
なめらか&クリーミーで食いやすく、普段使いしやすそうな印象。

マイルドなソースで、キャベツが一番輝いたカレーではあった。
ステンレス皿に残ったカレーをキャベツで拾って食うと、美味かったな。

いずれにせよ、カツカレーとはかなり方向性が違う。
再訪するなら、まずはカツカレーを食ってみたいかな。

チャンピオンカレー(県庁前店)

チャンピオンカレーは、店名が2パターンある。
直営店の「チャンピオンカレー」と、FC店の「カレーのチャンピオン」。

今回訪問したのは、直営店の県庁前店。
チャンピオンカレー

チャンピオンカレー 県庁前店 外観

券売機はクレカ対応。
券を買ったら席で待機、番号が呼ばれたら自分で取りに行く。
最近の松屋と同じスタイル。

店内は広く、早い時間だったので空いていた。

チャンピオンカレー 県庁前店 内観

名物は、「Lカツカレー」。
「カツカレー」は別にあり、「Lカツ」はとんかつサイズが大きめ。
今回は「Lカツカレー」(980円)をオーダーした。

チャンピオンカレー 県庁前店 メニュー

着丼した「Lカツカレー」。
まず、トンカツがぶ厚い。Lカツだからか?
そして、衣がサクサク。うまし。

チャンピオンカレー 県庁前店 Lカツカレー

カレーは粘度が高く、ねっとり濃厚。
そして甘辛さが特徴的だった。

口当たりが甘いのに、その後でスグに辛さがくる。
濃縮されてたスパイスが弾ける感じで、初速からトップギア。
辛さが、速い。

少量のルーで白飯が進む、いわゆる金沢カレー感。
後から辛いのに口当たりが甘いので、グングン食い進んでしまう中毒性。
甘い・辛いの転調が美味く、ひたすらスプーンでカレーを口に運ぶマシーンと化してしまう。
カツも分厚いし、大満足の一品であった。

こちらは、創業当初からはレシピが変わっているという「新レシピ」。
キッチンユキやインデアンカレーと比べると、より濃厚さ&粘度が高まってる感あり。
レシピが新しいほど、より濃厚さを追い求めた感じになってるんだろうな、と思った。
これは、第1世代以外の他の金沢カレー店でも思ったんだけど。

いや、うまいですね。
うま辛、Lカツカレー。

ゴールドカレー(本店)

ゴールドカレーは、チャンピオンカレーから2005年に独立して創業。
系譜図的には「その他のレシピ」で整理されている。。
ゴールドカレー

ちなみにゴールドカレーはタイのバンコクにも店舗があり、昔旅行でタイに行った際に食ったことがある。
「金沢」か「バンコク」でしか食えない!金沢カレーの老舗「ゴールドカレー」。バンコク本店に行ってみた。

金沢でも食ったことがあるけど、本店は初訪問。
チャンピオンカレー県庁前店の近くに、ゴールドカレー本店があった。

ゴールドカレー本店 外観

こちらのお店、珍しいのは「お味噌汁が無料」(セルフ)。
そしてランチタイム(11:00-15:00)と「5のつく日」はカツカレーが680円と安い。
「金沢カレー専門店で一番安い」とうたっていた。

ゴールドカレー本店  メニュー

確かにカツカレー680円は、安い。

今回、自分はタイムサービス時間外だった。
「Gカツカレー Mサイズ」(800円)。
味噌汁もセルフでいただいた。

ゴールドカレー本店  Gカツカレー

まず、何より味噌汁。
かき玉入りでうれしい。

カツは衣が衣が粗め、サクサク感がハンパない。
今回食った中では、一番衣がサクサクだったかも。

カレーは、これまた粘度が高めの金沢カレー感。
チャンピオンカレーより、更に粘度が高いかも。
粘度が高いとルーが少なくなるが、その分だけ味が濃いので問題はない。

辛さは、かなり遅効性というか、後から来る。
そこら辺は、初速が速いチャンピオンカレーとだいぶ違った。

「甘くて美味いな」とか思いながら食ってた。
ハバネロを自由に追加投入できるので、標準だと甘めなのかもしれない。
ただ店を出る頃には、やはりスパイスが効いて汗が出てきた。

濃厚なカレーに味噌汁も合う。
ハバネロソースは試そうかと思ったが、「いやー、これくらいの辛さがちょうどいいね」とか思ってパクパク食いつつ味噌汁を啜ってる間に完食してしまった。

ターバンカレー(本店)

ターバンカレーは、チャンピオンカレーのレシピとは別系統となる。
旧ターバンカレーを創業した2人が、「ターバンカレー」と「タナカのターバン」(後のチャンピオンカレー)に分岐。
その上でチャンピオンカレーのレシピと、ターバンカレーのレシピは違うとのこと。

東京にも店舗が多いゴーゴーカレーの創業者は、ターバンカレーで修行している。
後にターバンカレーが後継者問題に陥った際に、ゴーゴーカレーがターバンカレーを救う形でM&Aしており、現在のターバンカレーはゴーゴーカレー傘下。
wiki ゴーゴーカレー

なかなか入り組んでいて理解が追いつかないが、とりあえずターバンカレーの本店に行ってきた。
場所は、兼六園・金沢21世紀美術館の近く。
ターバンカレー

ターバンカレー 本店 外観

何度か店の前を通りがかったが、他の店よりインバウンドの人が多い印象的だった。

店の外に券売機がある。
今回は「ロースカツカレー(中)」(900円)をいただいた。

ターバンカレー 本店 メニュー

店内はカウンター席のみ。
目の前でカツが揚がるのをみれる。
そこら辺も、インバウンド客が多い要因か?

しばらくすると、やってきました。
ロースカツカレー。

ターバンカレー 本店 ロースカツカレー

食ってみると、イメージしてた通りの金沢カレー。
ただ、チャンピオン・ゴールドとは、少し方向性が違う。

スパイスの辛さより、あまじょっぱい感じが前面にくる。
甘くて、マイルドで、しょっぱくて。
ソースも効いてるかも。

粘度もチャンピオン・ゴールドよりは抑え目か。
そのため金沢カレー特有の「ルーが足りない?」と焦る感もなく、最後まで美味しくいただけた。
ロースカツは衣薄め、柔らかくて食いやすい。

ターバンカレー 本店 ロースカツ

こちらの店舗は、店の作りも懐かしい感じというか、雰囲気が良かった。
レトロな定食屋のカレー屋版のような感じで、カウンターから揚げ物を眺めるのも楽しい。

この店は2回空振りした。営業時間外。
近くに兼六園があるので、無問題である。
歩けば痩せる。

他のカレー屋もそうだが営業時間的に「昼」と「夜」で、その間が休み。
中途半端な時間に行くと、店が閉まってたりして。

ゴーゴーカレー(金沢駅総本山)

旅の最後に、金沢駅のゴーゴーカレーに向かった。
ゴーゴーカレーは東京にも店舗が多く、個人的には慣れ親しんだ味。
ゴーゴーカレー

ゴーゴーカレー金沢駅総本山 外観

ゴーゴーカレーは、ターバンカレーで修行した創業者が、東京で創業したチェーン店。
逆に現在は、ターバンカレーがゴーゴーカレーのグループに入っている。

ゴーゴーカレー店内には、ターバンカレーの宣伝もあった。

ゴーゴーカレー金沢駅総本山 ターバンカレーの看板

現在、ゴーゴーカレーとターバンカレーは同じ工場で作られている。
ゴーゴーカレーは、元々ターバンカレーとはレシピ・調理法が違うっぽいので、味も違うんだろうな、と思いつつ。

今回は、「ロースカツカレー」(800円)をいただいた。

ゴーゴーカレー金沢駅総本山 ロースカツカレー

食ってみると・・・

甘い。甘くて食いやすいカレー。
ターバンカレーに似てるが、アレよりしょっぱさが抑え目。

甘くて、ねっとり濃厚。
辛さが少なくて、食いやすいんだなぁ。

そうか、今まで自分がよく食ってたゴーゴーカレーは・・・
他の金沢カレーに比べると甘口寄りなんだな、と。

あと、粘度もチャンピオン・ゴールドより薄い感じ。

ゴーゴーカレー金沢駅総本山 ロースカツ

さすがに自分は食い慣れてるので、やっぱりゴーゴーカレーは美味い。
旅の締めくくりとして、良い感じだった。

まとめ

今回、チャンカレ史観の系譜図にあるカレー屋を巡った「百カリー夜行」。
唯一、「アルバ」は行けなかった。ちょっと遠いのよね。
ただアルバは秋葉原に店舗があり、何度か食ったことはある。

それはともかく。

食ってみると、同じ金沢カレーといっても結構違いがあるな、と。
最初は「それほど違いはないかも」と思ってたけど、結構、違いあるね。

スパイス感、甘さ、しょっぱさ、粘度、トンカツ。
それぞれ、違う。

ちょっと思い出しながらになるけど、自分の所感をまとめると以下。
※個人の感想です

  • 甘塩っぱい系
    • ターバンカレー
      • 甘くて濃厚、しょっぱさが強め
      • 粘度は抑え目、ルーに満ち足り、辛くないので食いやすい
    • ゴーゴーカレー
      • 甘くて濃厚、しょっぱさは弱め
      • このカレーの甘さが、味噌カツが如くトンカツに活きてくる感
  • スパイス系
    • チャンピオンカレー
      • 速効性のある辛みと、分厚いトンカツ
      • 甘辛で中毒性あり、食い始めると「甘い」と「辛い」の永久機関と化す
    • ゴールドカレー
      • 遅効性のある辛みと、超サクサクなトンカツ
      • カレーの粘度が一番高いかも、そこに味噌汁サービスが嬉しい
  • こちら側のカレー
    • キッチンユキ
      • 「濃厚」の深淵をのぞき込んでなお、「こちら側」に留まるブラックカレー
      • 複雑な味わいで素材を感じるカレーと、薄いカツの組み合わせが良き
  • 今回は比較外
    • インデアンカレー
      • 今回はマヨ入りの「ヤサタマ」を食ったので比較が難しい
      • 「ヤサタマ」はちょっとまたジャンルが違ってくる感

いつも東京で食うゴーゴーカレーは、ちょっと甘めなんだなと気付きがあった。
今回は、結構スパイスの効いた金沢カレーも食えて良かったかな。

今回食った中で、一番違いを感じたのはキッチンユキ。
これはいわゆる「最近の金沢カレー」とはまたちょっと違う感じで、個人的にホームランの味わいだった。

金沢から東京に帰ってきて、体重計に乗ってみたところ、2kg増えていた。
反省している。

ほい。

そんな感じ。

関連記事
読み込み中... 読み込み中...

この記事を書いた人 Wrote this article

tonogata
TOP