メルアドとパスワードの流出確認
今日もどこかで、ハッカー達が企業・サービスのWEBサイトをハッキングして、それらのWEBサイトが抱えるメルアドやパスワードを盗みとっている。
もっと酷い場合は、盗まれた情報にクレジットカードの情報も含まれる。
そうしたハッキング被害などによる個人情報の流出について、自分のメールアドレスやパスワードが該当するか確認するサービスを、Firefoxが始めた。
「Firefox Monitor」というサービスである。
Firefox Monitor
※ブラウザがFirefoxでなくとも使えるWEBページ
使い方は簡単で、上記のWEBサイトで自分のメールアドレスを打ち込むだけ。
そのメルアドが過去に流出していなければ、「今のところ、問題なし」(So far, so good)と表示される。
流出したことがあるメールアドレスの場合、「問題あり」(This might be a problem)と表示される。
更に、どの企業の個人情報流出事件に自分のメルアドが該当したが、教えてくれる。
Your accounts were compromised in the following breaches.
↑の例でいうと、Adobe、Dropbox、Last.fmで流出した個人情報に、当方のメルアドが含まれていた。
いずれも、当方が過去にアカウント登録していたWEBサービスだ。
また、具体的に「いつ」「どんなデータ」が流出したかも表示される。
例えば上記の「DropBox」の例でいうと、2012/6にメールアドレスとパスワードが流出した。
Breach date:July 1, 2012 (流出した日)
Compromised accounts:68,648,009 (流出したアカウント数)
Compromised data:Email addresses, Passwords (流出したデータ項目)
ちなみに、当方はすでにこの流出したメルアドのパスワードを変更し、メルアド自体も他のに変更した。
自分のメルアドが流出したか気になる場合、まずは上記サイトで確認してみるといいかもしれない。
ちなみに「Firefox Monitor」は、どのようにしてこの機能を実現したか?
この機能の中身は、「Have I Been Pwned」(HIBP)で出来ている。
「Have I Been Pwned」(HIBP)連携
「Firefox Monitor」はこの機能を、「Have I Been Pwned」(HIBP)のAPIを使って実現している。
Testing Firefox Monitor, a New Security Tool – Future Releases(英語のみ)
In order to create Firefox Monitor, we have partnered with HaveIBeenPwned.com (HIBP).
「Have I Been Pwned」(HIBP)は元マイクロソフト出身のセキュリティ専門家が作ったサービス。
HIBPでも「Firefox Monitor」と全く同じように、流出確認ができる。
Have I Been Pwned
ではHIBPは、どのように流出したメルアド・パスワードを検索できる機能を実現したか?
すごく簡単にいうと、こうなる。
(1)ハッカー達は獲得した個人情報を、アングラな掲示板やシェアサービスでやりとりしたり、いたずらに投稿することがある。
(2)そのアングラ掲示板やシェアサイトを、定期的にチェックするツールがある
(3)そのツールは、もし投稿されてしまったメルアド・パスワードがあれば、「メルアド」のみ「流出した情報」としてHIBPのデータベースに登録する
(パスワードは保持しない)
(4)「Have I Been Pwned」(HIBP)でメルアドを検索すると、そのデータベースを検索して流出確認できる
(*)ちなみにアングラで投稿されたデータには、「これはadobeからとった情報」とか「dropboxのユーザーデータ」みたいな情報も入っているので、そういう「どこから流出したか情報」もHIBPで分かるというワケ
厳密にいうと、ちょっと違うというかアレなんだけど、簡単に言うとそんな感じ。
詳細な話は下記に書いたので、参考まで。
自分のメールアドレスやパスワードの流出を確認できる「have i been pwned?」。確認したら、流出しててガックシ。
「Firefox Monitor」と「Have I Been Pwned」の違い
「Firefox Monitor」と「Have I Been Pwned」では、自分のメルアドを登録しておいて、いざHIBPが流出を確認したら、メールでお知らせしてくれる機能がある。
自分は以前から「Have I Been Pwned」を使っており、過去に2回ほど「流出した」というメールをもらった。
(個人的にメルアドはたくさんもっており、そのうちの2つの異なるメルアド)
その「流出した2つのメルアド」について「Firefox Monitor」で確認してみたが、うち1件は「流出ナシ」と表示された。
再度「Have I Been Pwned」でも確認したが、2件とも「流出した」と表示されている。
この違いは、なんだろうか?
これは「Firefox Monitor」が「Have I Been Pwned」のAPI経由で使っていることが関係していることとは思う。
でも「違い」がでる原因は分からない。
いずれにしろ、元データベースは「Have I Been Pwned」なので、心配なら「Have I Been Pwned」をみればいいんじゃないかな、と思う。
とはいえ、「Firefox Monitor」の方にもメリットはある。
「Firefox Monitor」でメルアドを調べる場合には、「k-Anonymity」で「調べる時のセキュリティの向上」を計っているのだ。
Scanning for breached accounts with k-Anonymity | Mozilla Security Blog
「メルアドが流出したかを確認する」には、ブラウザから「Firefox Monitor」のページでメルアドを入力して送信しないといけない。
(当然だ。そのメルアドを調べるんだから。)
しかし、もしその「調べるときのメルアドの送信」が盗聴されたりすると、セキュリティ的によくないよね、と。
そこで「k-Anonymity」の登場。
ざっと読んだ感じ、以下みたいな感じかな?
「Firefox Monitor」でメルアドを送信する場合、まずはメルアドをハッシュ値にする。
そしてハッシュ値の「先頭の6文字だけ」でHIBPのデータベースを検索する。
(fullのハッシュ値を送信しない)
その検索結果では、「他のメルアド(のハッシュ値)」も返却される。
(偶然その6文字を含むハッシュ値も、そうでないハッシュ値も、含む)
※メルアドのハッシュ値「D622FFBB50B11B0EFD307BE358624A26EE」について、先頭6文字「D622FF」で検索した結果
[
{
“HashSuffix”: “D622FFBB50B11B0EFD307BE358624A26EE”,
“Websites”: [
“LinkedIn”
] },
{
“HashSuffix”: “0000000000000000000000000000000000”,
“Websites”: [
“Dropbox”
] },
{
“HashSuffix”: “1111111111111111111111111111111111”,
“Websites”: [
“Adobe”,
“Plex”
] }
]
それを受け取ったクライアント側では、その複数のメルアドの情報(ハッシュ値)から、「調べたかったメルアドのハッシュ値」を抽出する。
この通信の過程では、「調べたかったメルアドのハッシュ値」を含め、複数のメルアドのハッシュ値が含まれることになる。
つまり、もしこの通信を盗聴されても、「調べたかったメルアドのハッシュ値」がどれかを盗聴者が特定することはできない。
(複数のハッシュ値が含まれているから)。
だいたい、そんな感じかな。
なお、本機能についてのトニーハント氏側(HIBP側)の記事は以下。
Troy Hunt: Were Baking Have I Been Pwned into Firefox and 1Password
そのほか
以前、興味本位で「Have I Been Pwned」(HIBP)を友人に勧めてみると、「そもそも、そのサイト自体は大丈夫なの?メルアド入力しても、安全なの?」と怖がって試してくれないことがあった。
今回、「Have I Been Pwned」(HIBP)がFirefox連携したことで、ある意味分かりやすく信用付けできたので、改めて知人2名にこのサービスを勧めて、試してもらった。
ちなみに2名とも、あまりWEBサイトへの登録をしない方である。
(つまり登録サイトが少ないので、流出の危険性も少ない)
結果は、1名がアウト(流出してた)、1名が「問題なし」だった。
これは個人的に、ちょっと興味深い結果だった。
その結果を受けてどうするか本人にきいてみたところ、「面倒なので、何もしない。パスワードも変更しない。今のところ、実害はなかったし。」と言っていた。
これまた、個人的には「確かになぁ」と思った。
「実害がすでにあったかどうか」はさておき(気付いてないだけの可能性がある)、確かにまぁ「流出」=「なんらか実害をこうむる」ワケではない、というか。
将来的なことはともかく。
心配しすぎず、楽観的に生きるのも悪くないよね、と。
皮肉でも、なんでもなく。
まぁ、個人的には速攻でパスワード変更するけど。
そんな感じ。