ANAが「予約時点で座席を確保する」と言う時、何が起きているのか

予約時点で座席を確保?

ANAは、アマデウス移行のシステムトラブルと、新料金プランの混乱で、問い合わせが殺到しているらしい。
わざわざお知らせの1ページを新設して、FAQを掲載している。

この度は国内線サービスのリニューアルに伴い、お客様には多大なるご不便とご心配をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。
お客様から特に多く寄せられているご質問につきまして、追加情報を掲載いたしました。
一刻も早い状況改善に向けて、引き続き全力で取り組んでまいります。

国内線サービスのリニューアルに関するよくあるお問い合わせ

ANA - 国内線サービスのリニューアルに関するよくあるお問い合わせ

そのFAQで、ちょっと意味が分かりにくいモノがあった。

Q:選んだ運賃によって、予約があっても搭乗できないことがありますか?
A:運賃によって、ご搭乗を制限することはございません。全ての運賃において、ご予約いただいた時点で当該便の座席は確保されます。シンプル運賃も同様に予約した時点で当該便の座席は確保されています。シンプル運賃を理由に不利益が生じることはございません。

国内線サービスのリニューアルに関するよくあるお問い合わせ

ANAによると、予約時点で「当該便の座席は確保」されているらしい。

しかし一方で、ANAはオーバーセールスも実施している。
つまり座席の定員数以上のチケットを販売している。
ANA運送約款変更と「予約してお金を払っても搭乗を断られる」リスク問題

そこで問題だ!

どうしてANAは、「予約時点で当該便の座席は確保してる」と言ってるのかニャ?

3択・・・ひとつだけ選びなさい。

  1. ANAはオーバーセールスをやめて、定員数分しか売らなくなった
  2. 実は購入時点は予約が完了しておらず、機内の座席に座った時点で予約が完了する
  3. ハンサムのポルナレフは突如反撃のアイディアがひらめく

ど、どれや?・・・

しかし、現実は非情である。

答えはこの中には、なかった。

「座席」と「予約」の危ない関係

どういう意味かな~と運送約款を読んでて・・・

なんとなく分かってきた。

素人の自分的には「当該便の座席は確保」と読むと、なんとなく物理的な座席を確保(必ず乗れる)とイメージしてしまう。

これが迂闊だった。

ここで言う「当該便の座席は確保」とは、「システム上の販売枠を確かに確保した」という意味らしい。
物理的な「座席」を確保したワケではないんだな。

例えば以下の「有効な座席予約」というワードも、「システム上の予約」という意味でしかない。
物理的な座席とは紐付いていないので、「予約便の座席定数よりも多くなってしまう」ようなことが発生する。
つまり、オーバーセールスのことだが。

第14条(旅客都合以外による変更/払戻)
(D)(オーバーセールス等による搭乗制限)
会社都合により予約便への搭乗手続きを求める旅客(会社の指定した時刻までに、会社の空港事務所において、有効な座席予約がなされている航空券の提示をして搭乗手続きを求めた者に限ります。)の数が、予約便の座席定数よりも多くなってしまったため、一部の旅客に対し座席の提供ができなくなる場合

「座席確保=(オーバーセールスを含む)販売枠内での予約データ成立」という解釈でいくと、以下も意味が通る。

第7条(予約)
(A)(総則)
1.予約は、会社の予約システムに座席が確保された時点で成立します。

「予約」は、購入者の「座席指定」前でも、オーバーセールス状態でも、お金を払った時点で成立する。
座席指定してからしか予約が成立しないと、24時間前からしか座席指定できないシンプルプランは悲劇である。
つまり、ここで言う「座席が確保」とは、予約システムでの予約データ成立(ただしく保存できました)の意味。

ということで・・・

ANAの言う「座席」とは、「予約システム上の予約データ成立」の意味でしかない。

ただし、約款上で明示的に「座席指定」「座席定数」という場合は、これは物理的な「座席」を指している。

以下は、「システム上の予約」の意味の「座席」。
物理的な座席確保とは、あんま関係ない。

第7条(予約)
(B)(座席の予約)
座席予約申込みは、会社の事業所において搭乗希望日の355日前より受付けます。ただし、会社が特定の旅客運賃を支払う旅客につき別段の定めをした場合は、この限りではありません。

以下は、物理的な「座席」。
座席指定、座席位置、、、の座席。

第7条(予約)
(D)(座席指定)
会社は、事前の通告なしに機材変更その他の理由で、旅客が指定した座席を変更することがあります。この変更には座席位置又は座席仕様の変更を含みます。

約款の定義上では、「座席」について、ちとダブルミーニング感がありますね。

ただ自分が初見で分からなかっただけで、航空業界では「座席確保=予約成立を意味する」的な背景があるのかもしれない。

座席確保をもう一度

どうしてANAは、「予約時点で当該便の座席は確保してる」と言ってるのかニャ?

やっと、その意味が分かった。

「ご予約いただいた時点で当該便の座席は確保されます」というのは・・・

「ご予約いただいた時点でご予約は成立してます」という意味だったのだ!!

なんか同語反復気味だが・・・

たぶん大事なことだから、2回言ってるんじゃないかな。

分かんないけど。

ANAが2回同じ事をいうことで何を意図してるかは不明だが、この声明は「オーバーブッキングされているかどうか」、「実際に乗れるかどうか」とは、一切関係がないんじゃないかな。

シンプル運賃に不利益はないのか

ついでなので、同じFAQの後半部分もちぇけちぇけしたいな、と思います。

ちぇけちぇけ。

Q:選んだ運賃によって、予約があっても搭乗できないことがありますか?
A:運賃によって、ご搭乗を制限することはございません。全ての運賃において、ご予約いただいた時点で当該便の座席は確保されます。シンプル運賃も同様に予約した時点で当該便の座席は確保されています。シンプル運賃を理由に不利益が生じることはございません。

国内線サービスのリニューアルに関するよくあるお問い合わせ

オーバーセールス(オーバーブッキング)で座席が足りず、フレックトラベラーも足りない場合、どうなるのか?
シンプル運賃でも、本当に「不利益が生じることはございません」なのかニャ?

ANA約款上では、「会社の定める搭乗優先順位」に基づいて、搭乗拒否をする対象を決めるとある。

搭乗を取りやめる者が十分でない場合は、会社の定める搭乗優先順位に基づき、会社は旅客の搭乗をお断りする場合があります。

ANA – 旅客手荷物運送約款(2026年5月19日以降)

ANAの「搭乗優先順位」は謎である。

ちなみに、ANAの今回のアマデウス移行は「グローバル標準」に寄せていく意図があったんだが・・・

グローバル標準での「搭乗優先順位」は、どんな感じなのかな。

例えば、ユナイテッド航空の約款。
ステータスや運賃が高ければ、搭乗拒否の確率は減る。

The priority of all other confirmed passengers may be determined based on a passenger’s fare class, itinerary, status of frequent flyer program membership, whether the passenger purchased the ticket under select UA corporate travel agreements, and the time in which the passenger presents him/herself for check-in without advanced seat assignment.

※日本語訳
乗客の運賃クラス、旅程、マイレージプログラムの会員ステータス、乗客が特定のUA法人旅行契約に基づいて航空券を購入したかどうか、および事前座席指定なしでチェックインのために乗客が到着した時間に基づいて決定される場合があります。

ユナイテッド航空 – 運送約款

続いて、アメリカン航空の約款。
ステータスや運賃が良ければ、搭乗拒否の確率は減る。
あと、チェックイン時間が早いのも有利。

Oversold flights(オーバーセールス)
Involuntary denied boarding(強制的な搭乗拒否)

Boarding priority is given to certain customers, including to those who:
(以下の条件に該当する特定の顧客には、搭乗の優先権が与えられます:)

・Have special assistance needs
(特別なサポートを必要とするお客様)

・Are traveling as an unaccompanied minor
(同伴者のいない未成年のお客様)

・Have AAdvantage elite status
(エリートステータスを持つお客様)

・Paid for First, Business or Premium Economy
(ファースト、ビジネス、プレミアムエコノミーの運賃を支払ったお客様)

・Checked in earliest
(最も早くチェックインしたお客様)

アメリカン航空 – Conditions of Carriage

それぞれのパラメータの強度は不明ながら、グローバル基準で搭乗拒否を避けるには以下が鍵になりそう。

  • ステータス
  • 運賃
  • チェックイン時間の早さ

ANAがどういうパラメータを使ってるか不明だが・・・

グローバル標準で考えると、「運賃」と「チェックイン時間」が「シンプル運賃」的にはイタいところですね。
チェックイン時間はどの運賃でも24時間前スタートで一律だが、他の運賃は少なくとも「座席指定」は先に済ませてるからなぁ。。。

ただ、ANAは「シンプル運賃を理由に不利益が生じることはございません」って言ってなかったっけ?

・・・あ、やべ。

ちゃんと読んだら、「シンプル運賃でも不利益が生じない」と言っているのは、「座席が確保されています」に限定されてた。

シンプル運賃も同様に予約した時点で当該便の座席は確保されています。シンプル運賃を理由に不利益が生じることはございません。

つまり、「シンプル運賃は予約した時点で予約完了してるので、その点では他の運賃と同じです」的な。

搭乗拒否のシーンでは、また違った話になってきそうですね。

グローバル標準を目指すANAが、一体どういう優先順位なのかは不明だが。

まぁ現実的には、フレックストラベラー制度でそこそこ不搭乗が集まるのかな。

台風とかの欠航で、不足席数が増えちゃう場合は別として。

ほい。

そんな感じ。

tonogata
tonogata

16件のコメント

  1. 面白い考察ですね。こういう言葉遊びをANAがしているのなら、オーバーブッキングが発生した時点で更にクレームになりそうですし、中長期的には会社としての信頼を損ねることになりそうです。

    • どもども。
      そうですね~。約款(契約)と異なる受け止め方をされるようなお知らせは、どうなのかな~という感じはありますね。

  2. ありがとうございます。夏にシンプル運賃で国内線乗るので、解読助かります。業界の専門用語を使った防衛線ですね。客側からクレーム付けられたときの。
    ステイタスは高くないし、どうなるかわかりませんが、ひとまず同行者にはANAマイレージ会員登録と航空券紐付けを頼みました。、

    • どもども。
      まぁ、実際には搭乗拒否が発生するシーンは、確率としてそんなに高くないとは思います。
      ゼロじゃないってだけで。。。

  3. いつも楽しく拝見しております。
    個人的にはシンプル運賃の場合は直前まで座席指定ができないと(=機材の座席の確保ができていない状態)ずっと過ごすことになるので気が気でないです。
    これまではステータスがあれば適当に座席を選べたのでそれで安心していたのですが、シンプルだとそうも行かず、混雑している便だと24時間前でも選択できる座席がないと言うことになって詰んでいる様に見えるのですが、そうではないということですかね。

    • どもども。
      24時間前に座席指定しようとしたら席がない、みたいなシーンがどれくらい発生するか分からないですが、そうなるとかなり不安になりますね。
      あのFAQの書き方はどうかなと思いますが、それはさておきANA的にはフレックストラベラーの運用で大抵なんとかするつもりなんだと思います。
      でも契約上は「24h前時点で詰んじゃってた」は可能性としてはありうるんだと思いますが。。。

  4. 約款読み込む、大事ですね。専門用語と法律用語を交えた長文読解的な・・・。
    しかも、搭乗者・利用者側の見解だと異なってしまいそうで、落とし穴が怖いですね。
    特典航空券利用時とかどうなっちゃうのかなと思いました。

    • どもども。
      特典航空券は早めに座席指定できる一方で、運賃パラメータとしては安く見積もられそうですね。
      どういうパラメータ処理してるでしょうな。。。

  5. 詐欺師の言葉も紐解くとなかなか面白いものですね。
    これがオールニッポンを名乗っていることが残念でなりません。

    • どもども。
      なかなかテクニカルなことやってるな、という感じですね。
      正直、その書き方を一般に向けるのは、どうなのかな~という。

  6. 席を予約したということは、売っている席を予約したということなんです。
    (進次郎構文じゃないか。)
    ダークパターンとまでは言えませんけど、ボカシ感を感じる人が多いってことは、
    それなりにブランドイメージを自ら毀損しているって考えるのが普通なんですけどね。
    この手のやり口は最近嫌われる傾向にありますから、翻って止めたほうが良い気がします。

    • どもども。
      本件は、言うなればブルーパターンですね(笑)
      どういうパターンなのかわからりませんが、かなり特色あるテクニックだとは思いました。

  7. 私、ステータス持ちなので座席指定できるのが当然と思い。シンプル運賃で予約してしまった一人です。去年の12月に今年の9月の便を予約しました。座席指定できなくて、不思議に思いサポートに電話で問い合わせたら、まさに木で鼻をくくったように、キャンセル料を払って予約をキャンセルし、座席指定可能な運賃で購入し直すように言われました。ステータスの特典は無くなったのかと聞くと、24時間前になったらステータスに合わせた座席が解放される点は変わっていません、とのことでした。
    すごい回答でした。

    • どもども。
      シンプル運賃は座席指定24h前で売りはじめた運賃ではありますが、この感じをみるに、予約完了時にもう一段「座席指定できないけどイイですか?」を挟むくらいしないといけなかったんだろうなと思います。
      ANA的には「安くするんだから当然座席指定もできない」ということなのかもしれないけど、マーケット観点で答え合わせした結果で言えば、告知の強度が足りなかったというか。

  8. おお、まさに気になっていた文言の解析です!
    すっきりしないけど、ちょっとすっきりしました(笑)
    とりあえずANAは「ご予約いただいた時点でご予約は成立してます」だと分かったので、
    (当面 JAL 乗るつもりですが) もし乗るならシンプルは回避して事前座席指定ですね。

    • どもども。
      シンプル運賃はトリッキーだから、注意が必要ですね。
      当方は株主優待のシンプル5%割引を使ってみたいので、果敢にアタックしていく予定ではありますが(笑)

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