- 作者: ダン・アッカーマン,小林啓倫
- 出版社/メーカー: 白揚社
- 発売日: 2017/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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元祖落ちゲーのレジェンドである「テトリス」。
テトリスは、旧ソ連の研究者アレクセイ・パジトノフが開発した。
開発してみたはいいが、「商品にして売る」という選択肢が当時のパジトノフにはなかった。
そもそも社会主義のソ連において、全ての「所有権」は国家にある。
政府機関たる研究室で作ったゲームを、勝手に「売る」なんてありえない。
そのためテトリスは、まずソ連内で静かに広がっていった。
まだ個人でパソコンを持っていることは少なく、インターネットもない時代。
フロッピーディスクに入ったテトリスは、「これ面白いよ」という口コミと共に手から手へ。
もちろんパジトノフには1円も入らない、無料のコピー。
そのうちフロッピーディスクは国境を越え、ソ連圏の端っこハンガリーにいきつき・・・
そのハンガリーでとうとう西側の人間に「発見」された。
ロバート・スタインというハンガリー生まれの男である。
ロバート・スタインはテトリスの権利を買って西側諸国に売り出すため、鉄のカーテン内にいるソ連の開発者を探しだした。
開発者パジトノフとFAXで何度か友好的なやりとりをしつつも、政治的な厚いベールに包まれたソ連との契約は難航し・・・
結果的に、契約があいまいなままテトリスは世に放たれた。
まずはPC版、そしてアーケード版、さらに家庭用ゲーム機版・・・
アメリカ、日本、西側諸国で大ヒット。
そのうちソ連の研究機関が、「契約もしてないハードウェア向けのテトリス」が西側諸国で出回っていることに気付き、怒り始める。
そして日米露をまたにかけた、ライセンス争奪の暗闘が始まる。
違約金を払ってでも、契約を確たるモノにしたいロバート・スタイン。
極秘で開発中のゲームボーイ向けにテトリスを乗せるため、任天堂の荒川實から密命をうけたヘンク・ロジャースも、単身ソ連へ。
(ヘンクロジャースは、ブラックオニキスの開発者でもある)
その動きを察知し、自身もロバートスタインからテトリスの権利を買っていたメディア王ロバート・マクスウェルは、旧友ゴルバチョフに働きかけを始める。
ゴルバチョフ曰く「あの日本企業については、もう心配いらない」・・・。
その頃アメリカでは、ファミコンのリバースエンジニアリング問題で任天堂と勝訴合戦を繰り広げていたテンゲン(旧アタリゲーム社)もテトリスの開発を進めており・・・
テトリスのライセンスを勝ち取るのは、誰か?
本書は、そのドキュメンタリーである。
時代背景的に、ゲームカルチャーの勃興と、謎に包まれた旧ソ連という難しさがあいまって、面白かった。
話が大きいというか、ダイナミックである。
これだけ世界中で売れた「テトリス」。
権利的に云々という話はきいたことがあったが、その細部はこの本で初めて知ることができた。
登場人物の考えや、その後の人生についても取材されており、ドキュメンタリーとして完結しているというか、読後感はさっぱり爽快。
いい話だったな、と。
ライセンス攻防は、複雑にドロドロしていたけど(笑
そう思いました。