jigブラウザがスゴイ理由(携帯でPCサイト閲覧)

jigブラウザ

jigブラウザの利用期間終了が近いということで、契約更新を促すメールがきた。
最近、2台目携帯としてiPhoneでも持とうかと検討しているので、もしそうなったらWEBはそっちで見るかもで、どうしようかな、と。
そういうことを考えている。

jigブラウザはドコモ携帯用の勝手フルブラウザで、年額6000円。
まぁ、ちょっと高い。
しかし、携帯に最初から入っているネイティブのフルブラウザを使うと、もっと高くなる。
ドコモはパケホのダブル定額上限が月額4,200円だが、携帯に最初から入っているフルブラウザを使うと、この上限が+1500円の5,700円になる。
なので、パケホ上限を4200円に抑えつつ、年額6000円をjigブラウザに払った方が月額1000円くらいお得。

フルブラウザ アプリ利用料 適用されるパケホ上限 月額費用の総計(税込)
jigブラウザ 年額6000円(=500円/月,税込) 4200円(税込4410円) 4910円(500+4410)
ネイティブ 0円 5700円(税込5985円) 5985円

しかもjigブラウザの方が、速度的にも機能的にも公式のフルブラウザより良い。
個人的には、jigブラウザの使い勝手の良さからして、年額6000円は全然納得のいく範囲。
ドコモ公式のネイティブ・フルブラウザの方は、iモードブラウザを作っているACCESS製のもので、ACCESS自体は日本のモバイルを代表するスゴイ会社なんだが、まぁ公式だけにキャリアから求められるセキュリティとか通信量等の制限もあるんだろうか。結果的にjigブラウザの方が使いやすい、ということになっている。

そんなこんなでいつもお世話になっているjigブラウザなんだけど、個人的に上述のような状況なので、今後のモバイルでのブラウジングをどうしようかというのでチョコチョコ調べていて。そのメモ。

リンク・フォーカス

例えばノートPCをマウスなしで、ポインティング・スティックとかタッチパッドでWEBサーフィンする場合、ポインタがリンク文字列を行き過ぎたり届かなかったりで制御が難しく、イライラしてしまう。
いかにマウスが偉大か、という。
マウスを持たない携帯でPC用ウェブサイトを見る場合も同様の問題が起きる。十字キーを慎重に動かして、リンク文字列の上にポインタを乗せなければいけない。
で、このストレスを回避する機能として、jigブラウザでは「リンク吸着機能」というのを用意している。

これはどういう機能かというと、リンクのない場所で携帯の決定キーを押すと、ポインタが最も近いリンク文字列の上にススッと動いて乗っかる、というもの。
(↓図はjigの特許資料より)

f:id:tonogata:20091101041039j:image

この機能のおかげでポインタの微調整から開放され、「リンクの近くで決定キーを押せば何とかなる」というアバウトな感覚でWEBサーフィンができるようになった。
個人的にこの機能が搭載された時、アイディア1つでここまで使い勝手が上がるものか、と驚いた記憶がある。現在ではACCESSの方も似たような機能があるけど、この機能こそjigブラウザが他のフルブラウザと比べてユーザビリティの面で評価されてきた理由のように思う。

ちなみに、この「リンク吸着機能」はjigから特許が出ている↓
携帯電話機を用いたパソコン用ウェブサイト閲覧を行うシステム(特開2007-213537)

一方、ACCESSのフルブラウザの方は、上記jigの特許を回避しつつ、同じようなアプローチをとっていて、こちらも便利。
jigの方は
「決定キーを押した時にポインタが最も近いリンクに吸着する」
が、ACCESSの方は
「上下左右キーを短押した時にポインタがその方向にあるリンクに吸着する」

ちなみに、短押しするとフォーカス移動(リンク吸着)で、長押しすれば画面移動モード(縦スクロールor横スクロール)になる。
このACCESS方式の場合、例えば「はてな」のトップページの「一般」「社会」「政経」「生活・人生」・・・のようにタブ・レイアウトのリンクが横に並んでいる場合、横キーを押せば順次フォーカス=ポインタが吸着するので、各リンクへのアクセシビリティという意味では、jig方式より早い。
ただし、大抵のページでは踏むリンクは1つか2つなので、いちいち自動でリンク吸着されるとちょっと使いずらいかな、という印象。少なくとも長押しスクロールとの使い分けに慣れるまでは。

こちらの特許は割と最近で、↓。
コンテンツ表示装置、コンテンツ表示方法、およびコンテンツ表示プログラム(特開2009-53784)
(【0053】あたりからがリンク・フォーカス関連の記述)

で、その他のフルブラウザの状況。
ドコモのフルブラウザというと、後はibisBrowserScopePicsel Browserがあるんだが、これらは吸着機能等はなく、iモードブラウザと同様に、フォーカスが1つずつ動くタイプのもの。
リンク・フォーカスという意味では、jigとACCESSがよく工夫されているかな、という結論。

ちなみに、非フルブラウザでいうと、ポインタを使わないiモードブラウザでのACCESSの特許が以下。
2006年のものですが、こちらもよく練られてるなー、と。
マークアップ言語ページのナビゲート方法、ブラウザおよび無線通信装置(特開2006-302296)

レンダリング方式

レンダリングというのは、HTMLタグとかCSSタグを解釈して、PC画面に表示する絵を作るっていう意味でのアレです。ブラウザの基本機能すね。

画面の小さい携帯でPC用ページをみる場合、どうしても「PCなら1画面で表示されているページの1部を切り取った形で携帯画面に表示する」という方式になる。んで、横スクロール、縦スクロールでページをウロウロする、という。
ACCESSの特許資料にある図でいうと、↓のような感じ。
(点線四角が携帯の画面で表示される部分)

f:id:tonogata:20091101041040j:image

ただ、この状態だと文章を読むためにイチイチ横スクロールが発生してしまうので、ACCESSやjig、Picsel Browserでは、なるべく縦スクロールのみで文章が読めるように、次のようにレンダリングしている。

f:id:tonogata:20091101041041j:image

この場合、文章を読むには↓スクロールさえすればよい。
と、まぁこんな感じでレンダリングされるので、携帯のフルブラウザを使ったことない人が想定するより、実は携帯でPC用ウェブページをみるのって、そんなキツくないんだよね。
この方式のレンダリングをしているのは、上述のようにACCESSやjig、Picsel Browserあたりで、細かい部分では色々違いがあると思うが、使用感は3社でだいたい同じような感じかな。
逆に、その他のアプリはこれがなくて、横スクロールが発生しないように全部縦にレイアウトしてたりする。この場合、ブラウジングはかなりキツくなる。

関連するACCESSの特許は以下。
コンテンツ表示装置、コンテンツ表示方法、およびコンテンツ表示プログラム(特開2009-87168)

通信&レンダリング速度

ページがみれるようになるまでの速度。
これは意外に各社で違いが出ていて、jigが早いと思う。

なぜjigが早いかと言うと、jigは中間サーバでレンダリングの前処理の計算するなど、低速なCPUより高速なサーバで先に色々やっておこう、そして携帯側は「表示するだけ」みたいにして負荷をかけないようにしよう、という発想になっているから。と思う(ACCESSがどうしているかの詳細は知らない)。
(中間サーバ=携帯と携帯がリクエストしたURLの間に入るサーバ。具体的には、携帯がリクエストしたURLのファイルをjig社のサーバが取りに行き、加工した上で携帯に渡している)

jig ACCESS
HTMLパーサ 中間サーバ=高速CPU 携帯=低速CPU
通信内容 レンダリング用の前処理ずみの独自圧縮形式 多分、リクエストしたHTML

こんなような違いがあるので、jigの方は割りとサクッとページ描画が終わるんだが、ACCESSの方は表示が終わるまでにちょっと待つ感じ。
元々jigは省パケ(パケット圧縮)のサービスで有名になった会社なので、そこら辺はノウハウがあるんじゃないかと。

サーバサイドで色々やっている点については、以下の記事に図で説明があって分かりやすいと思う。
【jigブラウザの発想・第1回】 クライアント/サーバ型サービスとして開発

jiglet

jigブラウザのスゴイとこ、ということでjigletは抜かせないんだけど、なんかもう長文疲れてきたのでアレだ。ちょっと端折る。
jigブラウザはjavaアプリなんだが、そのjavaアプリの上でユーザ作成のアプリ(javaアプリ)をインストール&実行できるというのが、jiglet。
メーラーとかRSSリーダーとか色々出てるのでチェケラ。百聞は一見に如かず。
携帯アプリで、商業ベースでこうしたプラグイン開放的なことをしているはjigのみ。

以下、jiglet関連特許。
複数のjavaアプリケーションが切替動作可能な携帯電話向けのブラウザプラットフォームシステム(特開2007-950313)

公式アプリじゃない理由

えーと、色々スグレもののjigブラウザだけど、ドコモやauでは公式メニューじゃなくて勝手アプリという扱い。
公式メニューになるには法人として携帯キャリアの審査が必要で、晴れて審査を通れば
・キャリアのポータルページに掲載される
・携帯電話の料金と一緒に料金が請求される
というメリットがある。
特にキャリア課金については、暗証番号で気軽に購入できたり、休眠率MAX50%(登録したことを忘れて月額300円を払い続けるユーザの率)というバブルを生み出す脅威の魔法装置なので、これができるとできないでは全くもって話が違ってくる。

しかしjigブラウザはドコモやauではキャリア申請が通らないらしく、勝手アプリとしてやっている。
なんで、キャリア申請が通らないかというと、キャリア的には
・PC用のリッチなWEBコンテンツをダウンロードされまくると回線を圧迫する
ということになるし、勝手に憶測するに
・PCサイト自由に見れちゃうと、天気やニュースで月額300円(の手数料)とってるキャリアのビジネスモデルが崩れちゃうからダメなんだろうな
ということになる。
そこら辺の話はjig社長の福野さんの記事でもちょろっと書いてある。

ボーダフォンはブラウザアプリ自体を規約で禁止している。また、auのBREW版EZアプリは、KDDIに申請して認可を得てからでないとリリースできない。福野氏によれば、KDDI側からは「EZwebサイトの利用を圧迫する可能性があるという理由で許可が下りなかった」という。つまり、定額制を利用して大量のデータをやりとりされると、ほかのEZwebサイトを利用するユーザーの伝送速度が遅くなったり、つながらなくなったりする可能性があるので許可できないということだ。
「jigブラウザはPCとケータイのギャップを埋めていく」–jig.jp福野社長

ちなみに、現在ではSoftbank版は公式課金を使っている。
あと、ドコモではjigブラウザとは別のサービス「jigデスクトップ」で公式メニューを展開中。

ということで

ということで、色々ありつつで、ドコモ・ユーザーにはjigブラウザオススメ。
iPhoneはさすがに画面の大きさが違うので、そこら辺に惹かれてるんだが。
あと、携帯のブラウザシーンで言うと、iモードブラウザ作ってるACCESSが「ACCESS DAY 2009」で、今後はJavaScriptの高速化に注力すると語ったそうで。
ドコモの例のjsの不具合も解消されつつあり、いよいよjsが携帯に徐々に浸透していきそう。携帯の買い替えが鈍っているのでスローモーな展開になるかもだが、市場シェア5割のドコモが動くとなると、今後の展開が楽しみ。
そしてjigブラウザも、現在はjsは一部対応という扱いだが、↑のようなネイティブアプリの煽りも受けつつ、js対応を加速するんじゃないかと。勝手に期待している。

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