夏休みに読んだ「リーマンの牢獄」、「バブルリゾートの現在地」、「ブチ抜く力」など
リーマンの牢獄
2008年の大不況、リーマン・ショック前夜。
371億円の詐取事件で実刑15年を受けた日本人のノンフィクション。
リーマンの牢獄

丸紅を騙し、ゴールドマンサックスを巻き込み、リーマンブラザーズから金を騙しとった。
その肝心の金は、クロサギと共に消えた。
圧倒的な怪作。
これはすごく面白かった。
値段が高い本なので躊躇してたが、もっと早く買えば良かった。
サブプライムローン崩壊の兆しがある時代背景の裏で、怪しい詐欺話がスイスイと進む。
雪解けしつつある不安定なゲレンデを、上滑りで疾走するようなスピード感。
コントロールも効かず、ただひたすらに速度を上げて滑り落ちて、現金だけが積み上がっていく。
ノンフィクションであり、筆者もそれなりのクセが強い。
「リーマンショックの一因は自分にある」と自負してみたり。
稼いだ金を何人かの「貧乏だが美しい高級コールガール」に渡して「恵まれない環境の女性を救いたい」と言ってみたり。
そこはかとなく漂う、自己陶酔感。
しかし、なにしろ時代はバブルである。
大金が動く。
そうなの、、、か?そうなるよね。。。と思ってしまう(笑)
山一證券の倒産から、リーマンショックまで。
筆者の動き回る舞台が派手だし、話を聞いてみると有名人もたくさん登場するし、全てがドラマチックに見えてくる。
あの時代の裏事情なんかも垣間見えるのが、面白かった。
バブルリゾートの現在地
バブル時代に量産された、区分所有のリゾートマンションや、不動産共有型のリゾートホテル。
その発展の歴史と、売るにも売れず廃墟化したりもする物件の現状について。
バブルリゾートの現在地

別荘を持てない庶民に、憧れの別荘を「区分所有」で安く売りまくる。
登記上の権利は、部屋・駐車場・共同エリアも細かく分割され、複雑化する。
そうした物件では、修繕金を積み立ててないのも多い。
景気が悪くなると管理費を払えなくなる人も増える。連絡もつかない。
滞納を理由に差し押さえしようとすると、競売にかけたりして「逆に費用がかかる」ので、打ち手がない。
その結果、廃墟化したりする。
廃墟化したのに登記はされてるので、人が住んでなくても、運営会社が潰れても、固定資産税が延々とかかる。
廃墟化する前に売り抜けようと思っても、買い手がいない。
別荘だけに、大抵の場合は不便なところにある。
スキー用の別荘の苗場とか。
バブルの夢の跡。
バブル時代に量産され、現代になって廃墟化が問題になってる「区分所有」「共同所有」の別荘問題。
郊外のトレッキングで見かける無人の別荘とかは、そういう裏事情があったりするのかもな、と思った。
面白い本でした。
みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史
2011年、大規模なシステム障害を起こしたニュースになった、みずほ銀行。
東日本大震災の義援金で、大量の振り込みが発生した結果のシステム障害だった。
みずほ銀行のシステムは1980年代からの継ぎ足しで、銀行合併による複雑化もある。
誰も全貌を理解していないソースコードは、合計すると1億行。
そのシステム統合の苦難の歴史。
みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

本書は時系列が「新しい順」に並んでおり、最初はちょっと混乱した。
しかしシステムの仕様とか制限がそれなりに細かく書いてあり、読み進めるほど興味深いというか、「残念な気持ち」になった。
昔のシステムを維持するのって、大変。
2019年にようやく新システムMINORIがローンチ。
開発費用は4000億円、一次委託で80社、2次と3次の委託会社は1000社。
これは、日本のITベンダーの1割が参加したことになるんだとか。
恐ろしい規模のプロジェクトですね。
面白かったのは、義援金でのシステム障害時の話。
システムが止まってるので、誰も現金の引き出し・振り込み・残高確認ができなかった。
当然、それで困る人は大勢でてくる。
そこで緊急対策として、1人10万円まではキャッシュカードを見せて窓口で頼めば、払い戻し可能にした。
つまり、みずほ側でも本人の口座に10万円があるかは不明だが、申し出があれば10万円を渡す、と。
「悪意を持って詐取する人が出てくるかも」という懸念もあったようだが…
結局、2011年の5月時点では4億円の未回収が発生。
逃げ切った人が大半と思われるが、逮捕された人もいたらしい。
みずほ銀特例で支払金詐取容疑 警視庁、元組員ら逮捕
ブチ抜く力(与沢翼)
「ネオヒルズ族」「秒速で1億円稼ぐ男」、与沢翼。
ちょっと古い本だが、面白い本でした。
ブチ抜く力(与沢翼)

とにかく、成功=お金=幸福の考え方なので、万人に向くわけでないが…
それを考慮した上で言えば、言ってることは理解できるし、集中力とか実行力がすごいな、と。
散々やんちゃもしたハズ?だが、そういうのも関係ない人生観で語られる。
その上で、苦労して得た経験からの言葉の数々が、面白い。
最も象徴的なのは、最初のフレーズ。
たった一つの結果のために、魂を売る。
ちょっと別の世界線の観念のように感じるが、言葉は重い。
どこかのSF小説にでてくる金言のようだった。
この部屋から東京タワーは永遠に見えない
「Twitterで大反響を呼んだ虚無と諦念のショートストーリー集」とのこと。
この部屋から東京タワーは永遠に見えない

田舎から東京の大学に出てきて、もがいて、落ち着いていく。
東京に染まり、東京で何かを見失い、東京の心地良い暗闇に沈んでいく。
そういう起承転結で、再現性が高いというか、典型的な上京物語の短編集。
登場アイテムとかブランドが流行りを抑えてて解像度が高いというか、当時を思い出す。
だいたいはアッパー層の話になるので、個人的には分からない部分も多いが、雰囲気は理解できた。
大学のクラスの「イケてる人たち」は、こうだったのかな、と。
後半はちと読むのがキツくなったが、前半は面白かった。
甘酸っぱい。
田舎から東京に出てきた人は、かなり面白いんじゃないかと。
七つの殺人に関する簡潔な記録
今回の連休で読んだ本では、一番面白かった。
すごい本だった。
七つの殺人に関する簡潔な記録

ジャマイカのギャング(ポシー)に関する物語。
ボブマーリーの暗殺未遂事件に絡んで、ギャング、政治家、CIA、アメリカ人記者、幽霊などが登場する。
ストーリーはギャングの抗争がメインだが、文章は一人称視点でコロコロと人物が切り替わる。
それぞれに、凄惨な暴力の中を必死に生きたり、結果おっ死んだり。
没入感がすごい。
視点がコロコロ変わるが、どの視点に飛んでも、同じ戦場が舞台のFPSをプレイしてるような緊張感がある。
常に警戒しながら、銃をもって、息も粗く、荒廃した戦場を1人で移動していく。どこかで撃たれる予感。
そういう雰囲気の、この時代のジャマイカを否応なく体験させられる。
最初は、「コレは一体、何を読んでいるんだ?」と混乱したが、徐々にハマって、抜けられなくなった。
そして読破するのに、相当な時間を要した。
ミステリー要素もあり、それがまた面白い。
流石にブッカー賞をとっただけのことはある。
「ブッカー賞」という賞の存在を知ったのは、この本の後書きだが。
ほい。
そんな感じ。




投稿ありがとうございます。
tonogataさんの書評、いつも参考にしてます。
『リーマンの牢獄』、読み物として面白そうですね。落合信彦的な。
『バブルリゾートの現在地』、私もこういう話好きです。
旅行趣味の人は不動産に関心が向きがちだと思いますが、tonogataさんはそちら方向には関心いかがですか?
一口に不動産投資と言っても規模や種類が様々で、その選択に個性が出て面白いです。