JALマイルの会計処理と、マイルのビジネスモデル

JAL 2027年3月期 第1四半期決算

JALの決算説明会の資料が出ていた。
2027年3月期 第1四半期決算になります。
JAL – 決算説明会

今期からの変化点として、「マイル発行」の売上と利益が資料にでている。
いままで、マイル関連の売上・利益は決算資料にはなかった。

JAL 2027年3月期 第1四半期決算 マイル発行収益

これによると、非航空領域での「マイル発行収入」は295億円(Q1)
年間だと1000億を超えてきそうだが、JAL全体の売上規模からすれば、これは7%程度に過ぎない。
それでもQ1の利益はほとんどを、このマイル収入が生んでいた。
※燃油代高騰のため航空事業は赤字だった

そのほか、例えば以下のような数字が資料に入っていた。

  • マイル発行の7割は、非航空系(JALカードや他社へのマイル販売など)
  • マイル利用の8割は、航空系(特典航空券など)

みんな、ポイ活で稼いで、特典航空券に雪崩れ込んでるんですな。。。

また、マイルのビジネスモデルについても紹介されていた。

曰く、マイルは「アセットライトな高収益ビジネスモデル」であり、コロナ禍のように航空需要が減衰するシーンにおいても売上利益を補填する役割がある。

JAL マイル発行のビジネスモデル

これがなかなか面白かったので、AIに色々聞いて勉強しながらの、メモにて。

「マイル発行収入」(295億円)

2026年Q1。
燃油代の高騰のため売上は伸びたが、主力の航空事業はまだ赤字。

Q1の利益(EBIT)は、JAL航空事業(FSC)が-8億、マイル・金融・コマースが+120億。
つまり利益のほとんどは「マイル・金融・コマース」で生んでいる。
※「マイル・金融・コマース」は、売上規模では全体の7%程度(1Q)

更にブレイクダウンすると、「マイル・金融・コマース」の売上・利益の8割は「マイル・金融」。
つまり、利益の大半が「マイルと金融」で創出されていることになる。

では、「マイル・金融」(EBIT=93億/Q1)とは何か?

おおよそ、以下の2系統がある。

  • (1) JALカードの決済手数料(推定1.5~3%?)や年会費など
  • (2) 他社へのマイル販売(推定1.5~2円/マイル?)など

以下、それぞれについて。

JALカード(約200億円)

Q1の「マイル発行収入」が295億円。
そのうち7割(200億)が、(1)JALカードの決済手数料や年会費の一部。
※金額は、ページ最上部の図(棒グラフの紫色)を参照

なぜJALカードの決済手数料や年会費が「マイル発行収入」になるのか?

JAL本体はJALカード(株)にマイルを売る(マイル単価=X円、推定1.5-2円)形になるが、これは連結決算では相殺される。
「マイル発行収入」(社外向け)にはカウントされない。
※JALはグループ会社に「株式会社JALカード」を抱えており、カード会社を持ってないANAとは大きく異なる

一方、ユーザーや社外から得た年会費や決済手数料などのキャッシュのうち、マイル付与の対価として会計上で切り出された約200億円が、グループ全体の「マイル発行収入(295億円)」としてB/S(契約負債)に還流する流れ。
要は年会費・決済手数料などの一部が、「マイル発行収入」になる。

JALカードの年会費や手数料がマイル収益として計上される仕組み

具体的には、JALカードが決済手数料や会費として回収したキャッシュのうち、会計ルール(IFRS第15号)に基づいて按分・評価された「繰延単価(見積単価)」に相当する分を契約負債(繰延収益)としてB/Sにプールし、実際にマイルが利用された際(あるいは失効した際)に売上として認識する。
例えば特典航空券でマイルが使われた場合、航空売上として売上認識することになる。

「按分・評価」は、例えば航空系(特典航空券)での償還なら1マイル=3円(例)、非航空系=1円(例)とかで評価した上で、その消化比率を予測して按分する(単価額はあくまで例)

マイル提携・ポイント(約95億円)

「マイル発行収入」が295億円(Q1)の残り3割(95億)が、「マイル提携・ポイント」
つまり、「(2)他社へのマイル販売」。
※金額は、ページ最上部の図(棒グラフの緑色)を参照
※厳密には他に「事業投資」とかもあるけど、規模が小さいのでここでは無視する

これは他社のサービスでJALマイルを付与する際に、JALがマイルを販売する分の売上。
ポイント交換で他社ポイントからJALマイルに交換される場合も、この枠に入る。
最近ではCapital OneやBilt Rewardsなど、グローバルとの提携も進んでいる。

この商流のマイルの売値単価は、内部(1)でのマイル単価と同じで、X円(推定1.5-2円)。
同じマイル(履行義務)なのに、獲得ルートによって計上する価値が異なると監査で引っかかるらしい。
そのため、マイル単価(売値)は基本的に同じモノと思われる。

そのマイル単価のX円(推定1.5-2円)だが、正確なところは分からない。

ただ、あまり高くしても売れないし、安すぎるとJAL的に逆鞘になる。
他社ポイントの交換レートの基本が2ポイント(≒2円):1マイル。
1pt=1円相当で扱うことも多い他社に1マイルを売る価格としては1.5円とか1.8円とか?
eJAL(1マイル=1.5円)やJAL Mall(1マイル=1円)などで自社に還流するので、少なくとも1円以上では売ってそう。

つまり1.5-2円程度なのかな、と。

分かんないけど。

マイルによる有事耐性

契約負債(繰延収益)として計上されている「マイル」だが、償還ルートで売上認識も変わってくる。

JAL特典航空券として利用された場合は、会計上は航空関連売上の枠に入る。

他社ポイントとの交換など外部流出でマイルが使われると、外部ポイントを買うための費用としてその売上が充てられるが、このルートは原価率が高くなり、JAL的にはおいしくないらしい。
※一方で、今後は特典航空券以外のマイル利用ルートについても、ユーザーが魅力的に感じつつもJALが利益を確保できるようなモノを拡充する方針とのことで、マリオットとの提携には、そういう側面もあるのかもしれない

JALとしては、「マイルを特典航空券として使ってもらうほど、利益と航空売上が伸びる」という構造。
※少なくとも後に述べる有事のタイミング以外では

さらにマイルは、コロナ禍のように特殊事情で航空需要が減った際に「売上とEBITを押し上げる」という作用もある。
つまり「有事で航空事業が超赤字になっても、マイル経済圏でカバーする」。
これは方向性としては理解しやすいが、実際のお金の動きとしてはどうなるのかな、と。

有事にJALマイルが発揮する会計上のレジリエンス

(1) マイル繰延単価の評価減

有事にみんなが飛行機に乗らなくなると、主力の航空事業がヤバくなる。
しかしその場合は特典航空券の利用も減るので、会員のマイル利用は非航空系が増える。

契約負債(繰延収益)は「マイル単価の高い航空系」+「マイル単価の安い非航空系」で償還比率を予測して計上している。
この「比率が変わる」(航空系が減る=B/S上の契約負債の見積額が減る)。
※平時のマイル利用統計は「航空系が8割」だが、これが減る

契約負債の見積単価が減り、減って浮いた分の金額はそのまま差益として売上・利益に転換される。

(2) マイル発行の差益増

上述のように、有事で非航空系でのマイル償還が増え、繰延単価が減少した場合。

例えば、マイルを他社にX円(推定1.5-2円)で売った場合、通常その分は全額が契約負債に回されて即時の利益は出ない。

しかし有事で、例えば「繰延単価」(負債に計上すべき見積単価)が1.0円に低下した場合…
負債としてプールすべきなのは「1.0円分」だけでよくなる。

残りの差額(0.5-1.0円分)は、マイルを販売した瞬間に「マイル発行時の差益(マージン)」として、マイル償還を待たずに即時に売上・利益に計上できる。

つまり有事で航空利用が減れば減るほど、この差益だけは大きくなる。
主力の航空事業が赤字化する中、(規模はともかく)マイル事業で売上・利益をカバーしていく。

マイルの非航空利用増によるマイル売買益増

※図にある各種の単価は、仮です(単価は公開されていない)

(3) マイル失効率増

航空利用が減り、会員が持っているマイルの失効率もあがる。
マイルは3年の有効期限があるので、期限切れマイルが増える。

マイル失効率は普段から統計を参考に試算されて、契約負債の計算に使われる。

その失効率が上がると「合理的に見積もれる」なら、その分を契約負債から取り崩して、即時に売上に転換できる。
会計ルール的に。
アシアナ航空、10年越しの一撃「期限切れマイル計上」叶わず、売却へ

しかも、実際にマイルが失効すると、JAL的には利益100%として会計処理できる。

まとめ

JALの決算資料は、今期からマイル関連のデータも入るようになった。
これはコロナ禍を経て、経営多角化のために「マイル事業」が本格化したからかな。
いままで見えてなかった数字感も、ぼんやりとは見えるにようになって、なかなか興味深かったです。

また、2021年のIFRS適用によって、会計手法が外からも予想しやすくなったというのもある。
マイルの2021年問題と、ANA・JALにおける国際会計基準(IFRS)の適用

今後、どんどん成長していくマイル関連ビジネスは注目ですな。

現在、JALのマイル収入は年間1,000億円レベルだが、北米の航空会社だとこれが1兆円を超える。
例えばデルタ航空はアメックスとの提携だけで1兆円を超える収入があって、航空収入より大きいという。

そういう領域まで、いっちゃうのかな?
米国、マイルを刷る銀行と化した航空会社と規制緩和の要否

というか、まぁ、良く分からないがマイルが欲しいでござる。

JALモバイルとかJAL NEOBANKとか、日常系でもいい感じのサービスが増えてきている。
この手のサービスが拡充されていくなら、ちょっと楽しみです。

ほい。

そんな感じ。

tonogata
tonogata

2件のコメント

  1. いざとなったら規約変えるだけで返済額変えれる預かり金ですからね。貨幣改鋳の権利を持ってるようなもんです。
    しかもいざ改鋳したら合法か、どれくらい信用を失うか、ANAが露払いしてくれる。
    笑いが止まらんでしょうな。

  2. ANAはNCAの完全子会社化に成功して自前のANAカーゴと共に貨物便で乗客からの収入のヘッジに据えているようです。
    JALは復活させたばかりで767数機しかなくまだ貨物収入もそこまで見込めないから金融に手を出しているように見えますね。
    ホテルとの連携を含めて一貫性を持った経済圏を築こうとしている訳でしょうか。
    ポイントサイトでの交換先一番人気がマイルであるように飛行機での旅行が神格化されている訳ですから価値をうまくコントロールしていけば収益の柱として機能しそうです。
    お金の扱いにシビアな中間から上位の所得層が家計簿上では損に見える余計な出費でもマイルの為ならと正当化してしまうほどの魔力ですから、目が醒めるような改悪が無ければいいですね。

    その前に相次ぐ機内スタッフ飲酒遅れ問題の解決ですが…
    最近機内販売やドリンクサービスやラウンジに並ぶ酒の選ぶセンスが良いと聞きます。
    もしやテイスティングに参加してアルコールを抜くのを忘れてああなっているのでしょうかね?

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