最近、ケータイ小説の代表的な出版社、スターツ出版の中間決算が出た。
通期見通しの営業利益が70%減など、大幅な減収・減益。
説明資料をみてみると、不調の要因として挙げられた理由に、気になる文言があった。
「ケータイ小説ブームの終焉」
本当にブームは終焉したのか?
気になったので、調べてみた。
ケータイ小説ブームとは
出版におけるケータイ小説の始まりは、2002年の『Deep Loveアユの物語』(スターツ出版)に遡る。
- 作者: Yoshi
- 出版社/メーカー: スターツ出版
- 発売日: 2002/12/01
- メディア: 単行本
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その後、2005年頃から多くの出版社が参入、ヒット作を世に送り出し、いわゆる「ケータイ小説ブーム」が巻き起こった。
「ホントにそんなブーム、あったのか?」と思う人もいるかと思うが、2007年の年間ベストセラー・ランキングの小説部門(トーハン調べ)では、10冊中、5冊がケータイ小説だった。
しかも、宮部みゆきや東野圭吾、劇団ひとりの「陰日向に咲く」を抑えて、いずれも1位〜7位にくいこんでいる。
(そこらへんはケータイ小説@wikipediaが詳しいのでそちらで)
2007年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ
(黄色がケータイ小説)
1 | 恋空 切ナイ恋物語 (上)(下) | 美嘉 | スターツ出版 |
2 | 赤い糸 | メイ | ゴマブックス |
3 | 君空 | 美嘉 | スターツ出版 |
4 | 一瞬の風になれ(1)(2)(3) | 佐藤多佳子 | 講談社 |
5 | もしもキミが。 | 凛 | ゴマブックス |
6 | 求めない | 加島祥造 | 小学館 |
7 | 純愛 | 稲森遥香 | スターツ出版 |
8 | 陰日向に咲く | 劇団ひとり | 幻冬舎 |
9 | 夜明けの街で | 東野圭吾 | 角川書店 |
10 | 楽園(上)(下) | 宮部みゆき | 文藝春秋 |
2008年のケータイ小説売上状況
2007年は絶好調だったケータイ小説も、2008年は「よくない」という話がチラホラ聞かれるようになった。
出版科学研究所の出す業界紙「出版月報」7月号によると、
ケータイ小説ブーム一段落で販売金額落ち込む
とある。
「白いジャージ」(スターツ出版)などが年初に売れたほかは目立ったヒットもなく、全体的な部数も落ち込んでいるため、
ブームは沈静化し、一定のファンは残ったという状況
らしい。
また、同誌で発表されている上半期のランキングでも
07年は5点がランクインし大きな話題になったケータイ小説は、今季のランクインはゼロ。
ブームはひとまず終焉したと見て良い
とのこと。
つまり業界的には、2008年で「ケータイ小説ブームは終わった」(少なくとも一段落した)と。
今後のケータイ小説
決算資料によると、スターツ出版はケータイ小説の状況を以下のように考えているらしい。
- 読者層が低年齢化(小・中学生)
- 発行点数増加で飽和ぎみ
- ジャンルとしては確立
このため、同社では
ティーン向け出版強化する
とのこと。
ティーン向けといえば、携帯関連ですぐ思いつくのはモバゲーだが、もちろんモバゲーも携帯小説の投稿機能を持っている。
スターツでは「野いちご」。
最近ではケータイ小説の投稿サイトって山のようにあるが、
投稿サイトでヒット発掘→出版→ウマー
というのが難しい中で、どう収益に結びつけていくのかってのは、興味深い。
何にしても、「ケータイ小説が終わった」のは出版業界においてであって、携帯業界のソレではない。
ケータイ小説の成り立ちは、「ケータイで書き、ケータイで読む」なんであって、コンテンツとしてはそのサイクルの中で豊熟し、普及していったんだ、と。
出版は、「普段本を買わない女子高生が、携帯での読破記念で買っている」という分析もある通り、そのサイクルとは外れたところで開花した仇花っぽい面も。
なんで、今後は
- 出版厳しい
- 有料課金モデルは崩壊中
の中で、ケータイ小説を携帯サイトがどう扱っていくかってのに注目っすね。
(おまけ)年間ベストセラーランキングの推移でみるケータイ小説ブーム
以下、黄色背景が「ケータイ小説」
2003年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ
1 | 世界の中心で、愛をさけぶ | 片山恭一 | 小学館 |
2 | 半落ち | 横山秀夫 | 講談社 |
3 | Deep Love 第1〜3部、特別版 | Yoshi | スターツ出版 |
4 | キャッチャー・イン・ザ・ライ | J.D.サリンジャー 村上春樹 訳 | 白水社 |
5 | 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 | アレックス・シアラー 金原瑞人 訳 | 求龍堂 |
6 | ブレイブ・ストーリー(上・下) | 宮部みゆき | 角川書店 |
7 | 冬のソナタ (上・下) | キム・ウニ ユン・ウンギョン 宮本尚寛 訳 | NHK出版 |
8 | よく見る夢(上・下) | シドニィ・シェルダン 天馬龍行 訳 | アカデミー出版 |
9 | 誰か | 宮部みゆき | 実業之日本社 |
10 | エ・アロール | 渡辺淳一 | 角川書店 |
2004年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ
1 | 世界の中心で、愛をさけぶ | 片山恭一 | 小学館 |
2 | 蹴りたい背中 | 綿矢りさ | 河出書房新社 |
3 | いま、会いにゆきます | 市川拓司 | 小学館 |
4 | 蛇にピアス | 金原ひとみ | 集英社 |
5 | 冬のソナタ (上・下) | キム・ウニ ユン・ウンギョン 宮本尚寛 訳 | NHK出版 |
6 | Deep Love (1、2、3、4) | Yoshi | スターツ出版 |
7 | ダ・ヴィンチ・コード (上・下) | ダン・ブラウン 越前敏弥 訳 | 角川書店 |
8 | アフターダーク | 村上春樹 | 講談社 |
9 | 博士の愛した数式 | 小川洋子 | 新潮社 |
10 | インストール | 綿矢りさ | 河出書房新社 |
2005年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ
1 | 「もっと、生きたい…」 | Yoshi | スターツ出版 |
2 | 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン | リリー・フランキー | 扶桑社 |
3 | 恋バナ (青・赤) | Yoshi | スターツ出版 |
4 | 野ブタ。をプロデュース | 白岩 玄 | 河出書房新社 |
5 | ハッピーバースデー | 青木和雄 吉富多美 | 金の星社 |
6 | ダ・ヴィンチ・コード (上・下) | ダン・ブラウン 越前敏弥 訳 | 角川書店 |
7 | いま、会いにゆきます | 市川拓司 | 小学館 |
8 | 半島を出よ (上・下) | 村上 龍 | 幻冬舎 |
9 | 対岸の彼女 | 角田光代 | 文藝春秋 |
10 | 東京タワー | 江國香織 | マガジンハウス |
2006年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ
1 | 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン | リリー・フランキー | 扶桑社 |
2 | 陰日向に咲く | 劇団ひとり | 幻冬舎 |
3 | 恋空 切ナイ恋物語 (上)(下) | 美嘉 | スターツ出版 |
4 | 容疑者Xの献身 | 東野圭吾 | 文藝春秋 |
5 | 天使がくれたもの | Chaco | スターツ出版 |
6 | 翼の折れた天使たち (空)(海) | Yoshi | 双葉社 |
7 | 明日の記憶 | 荻原 浩 | 光文社 |
8 | DEATH NOTE ANOTHER NOTE | 西尾維新 大場つぐみ 小畑 健 | 集英社 |
9 | 名もなき毒 | 宮部みゆき | 幻冬舎 |
10 | Line ライン | Chaco | スターツ出版 |
2007年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ
1 | 恋空 切ナイ恋物語 (上)(下) | 美嘉 | スターツ出版 |
2 | 赤い糸 | メイ | ゴマブックス |
3 | 君空 | 美嘉 | スターツ出版 |
4 | 一瞬の風になれ(1)(2)(3) | 佐藤多佳子 | 講談社 |
5 | もしもキミが。 | 凛 | ゴマブックス |
6 | 求めない | 加島祥造 | 小学館 |
7 | 純愛 | 稲森遥香 | スターツ出版 |
8 | 陰日向に咲く | 劇団ひとり | 幻冬舎 |
9 | 夜明けの街で | 東野圭吾 | 角川書店 |
10 | 楽園(上)(下) | 宮部みゆき | 文藝春秋 |