ケータイ小説ブームが終わったらしい

最近、ケータイ小説の代表的な出版社、スターツ出版の中間決算が出た。

通期見通しの営業利益が70%減など、大幅な減収・減益。

説明資料をみてみると、不調の要因として挙げられた理由に、気になる文言があった。

「ケータイ小説ブームの終焉」

本当にブームは終焉したのか?

気になったので、調べてみた。

ケータイ小説ブームとは

出版におけるケータイ小説の始まりは、2002年の『Deep Loveアユの物語』(スターツ出版)に遡る。

Deep Love―アユの物語 完全版

Deep Love―アユの物語 完全版

その後、2005年頃から多くの出版社が参入、ヒット作を世に送り出し、いわゆる「ケータイ小説ブーム」が巻き起こった。

「ホントにそんなブーム、あったのか?」と思う人もいるかと思うが、2007年の年間ベストセラー・ランキングの小説部門(トーハン調べ)では、10冊中、5冊がケータイ小説だった。

しかも、宮部みゆきや東野圭吾、劇団ひとりの「陰日向に咲く」を抑えて、いずれも1位〜7位にくいこんでいる。

(そこらへんはケータイ小説@wikipediaが詳しいのでそちらで)

2007年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ

(黄色がケータイ小説)

1 恋空 切ナイ恋物語 (上)(下) 美嘉 スターツ出版
2 赤い糸 メイ ゴマブックス
3 君空 美嘉 スターツ出版
4 一瞬の風になれ(1)(2)(3) 佐藤多佳子 講談社
5 もしもキミが。 ゴマブックス
6 求めない 加島祥造 小学館
7 純愛 稲森遥香 スターツ出版
8 陰日向に咲く 劇団ひとり 幻冬舎
9 夜明けの街で 東野圭吾 角川書店
10 楽園(上)(下) 宮部みゆき 文藝春秋

2008年のケータイ小説売上状況

2007年は絶好調だったケータイ小説も、2008年は「よくない」という話がチラホラ聞かれるようになった。

出版科学研究所の出す業界紙「出版月報」7月号によると、

ケータイ小説ブーム一段落で販売金額落ち込む

とある。

白いジャージ」(スターツ出版)などが年初に売れたほかは目立ったヒットもなく、全体的な部数も落ち込んでいるため、

ブームは沈静化し、一定のファンは残ったという状況

らしい。

また、同誌で発表されている上半期のランキングでも

07年は5点がランクインし大きな話題になったケータイ小説は、今季のランクインはゼロ。

ブームはひとまず終焉したと見て良い

とのこと。

つまり業界的には、2008年で「ケータイ小説ブームは終わった」(少なくとも一段落した)と。

今後のケータイ小説

決算資料によると、スターツ出版はケータイ小説の状況を以下のように考えているらしい。

  • 読者層が低年齢化(小・中学生)
  • 発行点数増加で飽和ぎみ
  • ジャンルとしては確立

このため、同社では

ティーン向け出版強化する

とのこと。

ティーン向けといえば、携帯関連ですぐ思いつくのはモバゲーだが、もちろんモバゲーも携帯小説の投稿機能を持っている。

スターツでは「野いちご」。

最近ではケータイ小説の投稿サイトって山のようにあるが、

投稿サイトでヒット発掘→出版→ウマー

というのが難しい中で、どう収益に結びつけていくのかってのは、興味深い。

何にしても、「ケータイ小説が終わった」のは出版業界においてであって、携帯業界のソレではない。

ケータイ小説の成り立ちは、「ケータイで書き、ケータイで読む」なんであって、コンテンツとしてはそのサイクルの中で豊熟し、普及していったんだ、と。

出版は、「普段本を買わない女子高生が、携帯での読破記念で買っている」という分析もある通り、そのサイクルとは外れたところで開花した仇花っぽい面も。

なんで、今後は

  • 出版厳しい
  • 有料課金モデルは崩壊中

の中で、ケータイ小説を携帯サイトがどう扱っていくかってのに注目っすね。


(おまけ)年間ベストセラーランキングの推移でみるケータイ小説ブーム

以下、黄色背景が「ケータイ小説」

2003年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ

1 世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一 小学館
2 半落ち 横山秀夫 講談社
3 Deep Love 第1〜3部、特別版 Yoshi スターツ出版
4 キャッチャー・イン・ザ・ライ J.D.サリンジャー 村上春樹 訳 白水社
5 13ヵ月と13週と13日と満月の夜 アレックス・シアラー 金原瑞人 訳 求龍堂
6 ブレイブ・ストーリー(上・下) 宮部みゆき 角川書店
7 冬のソナタ (上・下) キム・ウニ ユン・ウンギョン 宮本尚寛 訳 NHK出版
8 よく見る夢(上・下) シドニィ・シェルダン 天馬龍行 訳 アカデミー出版
9 誰か 宮部みゆき 実業之日本社
10 エ・アロール 渡辺淳一 角川書店

2004年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ

1 世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一 小学館
2 蹴りたい背中 綿矢りさ 河出書房新社
3 いま、会いにゆきます 市川拓司 小学館
4 蛇にピアス 金原ひとみ 集英社
5 冬のソナタ (上・下) キム・ウニ ユン・ウンギョン 宮本尚寛 訳 NHK出版
6 Deep Love  (1、2、3、4) Yoshi スターツ出版
7 ダ・ヴィンチ・コード (上・下) ダン・ブラウン 越前敏弥 訳 角川書店
8 アフターダーク 村上春樹 講談社
9 博士の愛した数式 小川洋子 新潮社
10 インストール 綿矢りさ 河出書房新社

2005年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ

1 「もっと、生きたい…」 Yoshi スターツ出版
2 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン リリー・フランキー 扶桑社
3 恋バナ (青・赤) Yoshi スターツ出版
4 野ブタ。をプロデュース 白岩 玄 河出書房新社
5 ハッピーバースデー 青木和雄 吉富多美 金の星社
6 ダ・ヴィンチ・コード (上・下) ダン・ブラウン 越前敏弥 訳 角川書店
7 いま、会いにゆきます 市川拓司 小学館
8 半島を出よ (上・下) 村上 龍 幻冬舎
9 対岸の彼女 角田光代 文藝春秋
10 東京タワー 江國香織 マガジンハウス

2006年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ

1 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン リリー・フランキー 扶桑社
2 陰日向に咲く 劇団ひとり 幻冬舎
3 恋空 切ナイ恋物語 (上)(下) 美嘉 スターツ出版
4 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋
5 天使がくれたもの Chaco スターツ出版
6 翼の折れた天使たち (空)(海) Yoshi 双葉社
7 明日の記憶 荻原 浩 光文社
8 DEATH NOTE ANOTHER NOTE 西尾維新 大場つぐみ 小畑 健 集英社
9 名もなき毒 宮部みゆき 幻冬舎
10 Line ライン Chaco スターツ出版

2007年ベストセラー(単行本/文芸)@トーハン調べ

1 恋空 切ナイ恋物語 (上)(下) 美嘉 スターツ出版
2 赤い糸 メイ ゴマブックス
3 君空 美嘉 スターツ出版
4 一瞬の風になれ(1)(2)(3) 佐藤多佳子 講談社
5 もしもキミが。 ゴマブックス
6 求めない 加島祥造 小学館
7 純愛 稲森遥香 スターツ出版
8 陰日向に咲く 劇団ひとり 幻冬舎
9 夜明けの街で 東野圭吾 角川書店
10 楽園(上)(下) 宮部みゆき 文藝春秋

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